健康食品の機能性表示が準備されるなど、セルフメディケーション市場に動きがある中、OTCの新規需要創造と既存市場の活性化は急務の課題となってきた。日本OTC医薬品協会(JSMI、吉野俊昭会長)は今年度、OTCの所得控除制度の創設やスイッチOTC促進を重点活動に挙げた。OTCの所得控除は税制大綱の検討事項となり、スイッチOTC促進も議論の前進はみられるが、その実現には国民、行政、あるいは利害対立する業界の理解を得る明確なロジックが必要である。

10年後の在るべき姿を具体化
JSMIは昨年5月、「OTC医薬品グランドデザイン構築プロジェクト」を発表した。プロジェクトのテーマは新規需要創造、既存市場活性化、グローバル化の3点で、昨年秋までに各テーマに沿ったアクションプランの素案を策定している。
今年はその素案に基づき、「10年後のOTC産業のあるべき姿を具体化する環境づくりをおこなう」(吉野会長)という。年初よりカウンターパートとの協力体制を整備し、5月の総会後の会見で、具体的な内容を公表する予定だ。
また今年の重点活動として、グランドデザインの柱となるOTCの所得控除制度の創設と、スイッチOTCの促進、薬育活動の継続、海外展開等の項目を挙げている。
OTCの所得控除は、セルフメディケーション推進の機運の高まりを受け、昨年末の与党税制大綱の継続検討事項の上位に挙げられた。現状の医療費控除制度はOTCを含めた自己負担額が年10万円以上に適用されるが、JSMIの提案は同制度と切り離し、OTCを年2万5000円以上購入した世帯に控除を受けさせる内容である。
生活習慣病対策費用を減らす
所得控除を要望する理由について、上原明副会長は以下のように語っている。
「市場低迷の中、セルフメディケーション領域のOTCの活性化は業界全体の課題だが、その取り組みが、国民の利益に資するものか否かが問われている。高齢長寿社会には『健康で美しく老いたい』『出来るだけ人様に迷惑をかけず人生を全うしたい』という思いがあるが、まさにそれはセルフメディケーションの発想である。しかし国民は、予防は健康食品や運動で管理し、病気になったら医者に行くが、健康の維持・改善にOTCを活用するという意識が希薄だ。
健康の阻害要因となる生活習慣病の予防は若い頃のケアが重要で、発症してから医者に駆け込んでも遅い場合が多い。こうした部分でOTCが貢献できるシーンは少なくない。世界に冠たる国民皆保険制度を堅持し、医療の質を保つためにも、(生活習慣病の)早期発見と早期治療は重要で、その役割は薬局とそこで働く薬剤師が担うべきだ。生活習慣病は生涯治療が伴うが、早期治療が実現すれば、結果的に医療費の17%、実に6兆円を占める生活習慣病治療費を減らすことができる。
現状は、国民に医療費(保険料)が国の負担という認識がなく、『OTCは高い』と判断されてしまう。そうした観点から税制面の対応をお願いしてきた。実現に向けた課題は多いが、生活者や行政、小売団体、薬剤師会、医師会等と立場の違いを超えて話し合い、今後一年間をかけて議論を詰めたい」
日刊ドラッグストア2015年2月3日号より抜粋