西友(スティーブ・デイカスCEO)は14年度、既存店が4.3%増と好調だったことで増収営業増益となった。消費増税前の仮需を取り込む一方、反動を最小限に抑え、既存店は1990年以降の24年で最高の伸長率となった。15年度は生鮮のさらなる品質向上、リアル店舗の改装・ネットの環境の整備など、14年度の取り組みを深堀りすることでいっそうの成長を目指す。EDLPの継続的な強化で5日から6カ月間、200アイテムの価格を据え置くプログラムを開始した。
14年3月度の既存店は15%増と高水準の伸びをみせた。その反動が懸念されたが、4月度は2%減にとどめた。5月以降も売上を拡大しながら販管費比率を改善することで収益性を高め、6年連続で増収営業増益を達成したという。販管費比率は07年からの7年間で6.8P改善している。
EDLP推進のひとつの柱として取り組むPB「みなさまのお墨付き」と「きほんのき」は計600アイテムで、売上高は28%増だった。15年末までに900アイテムに拡大する。また、生鮮のいっそうの品質向上を目指す「ど生鮮」の取り組みを推進し、生鮮3品の売上高は8.1%増となった。
戦略部門の位置づけで若菜が展開する惣菜は、商品改廃のペースを加速するとともに、夜間の品揃えを強化し、既存店ベースで5.1%増となった。惣菜工場と畜産PCへ投資して原料の共有化を進め、原価低減を図った。生産性を高めながら、若菜で多様なメニューを商品化できる体制を充実させた。
ネット販売品の店舗受取を実験
これらの取り組みが奏功したことを踏まえ、15年度はEDLPの継続的な強化によって低価格戦略をより強固にするとともに、環境の整備を進める。リアル店舗は「ど生鮮」の取り組みと連動し、40店を改装する。生鮮・惣菜の強化と、利便性を高める売場づくりを追求する。一方、不採算の30店を閉鎖する。
ネット事業はeコマース「SEIYUドットコム」の受注・配送能力の拡大に向け、首都圏で体制を整備する。店舗出荷型のネットスーパーと、衣料品、住関連、直輸入品などを取り扱うセンター出荷型のネット通販を融合しており、一回で発注・決済できる。14年度、売上高は53%増で、会員数は96万人(50%増)となった。
企業コミュニケーション部の金山亮執行役員シニア・バイス・プレジデント(SVP)は、「高齢化の進展や女性の社会進出の加速、都心部の人口増加などで、特に生鮮を含む高頻度商品のネットスーパーの需要が拡大することを見据えている。eコマースは時間や場所の制約を解放し、お客さまの都合に合わせて注文するもので、高頻度商品であれば、EDLPを戦略のベースとする当社の優位性がより発揮できる。リアル店舗とネットの相乗効果を最大限発揮できる体制を目指す」と語った。
店内作業の生産性を高めるため、ウォルマートグループの英国アズダ(ASDA)のノウハウを活用し、ピッキングミスの削減や効率的なピッキング順序を表示するなどの機能が付いた従業員向けのネットスーパー用端末を導入する。
また3月中旬、リビルドする元町店(長野県松本市)で「クイック&コレクト」の実験を開始する。店舗敷地内のロッカーに商品を留め置きするもので、注文時に受取時間帯を指定し、付与されたパスワードを入力する。自宅だけにとどまらない受取拠点の拡大で利便性向上の可能性を模索する。将来的には駅などの公共施設にロッカーを設置することや、ドライブスルー型なども構想している。
センター出荷型は配送能力を高めるとともに、展開エリアの拡大をねらう。

EDLPの深耕で5日から6カ月間、計200品目の価格を固定する「プライスロック」の取り組みを開始した。急激な円安や原材料価格の高騰などで売価への転嫁が進む中、高頻度商品を中心に選定した。内訳は生鮮がサーモンや牛肉など13品、惣菜が弁当やおにぎりなど9品、加工食品が117品、日用雑貨が61品となる。200アイテムのうち約4割はさらに売価を引き下げた。
マーケティング本部担当の富永朋信執行役員SVPは、「当社の調べによると、60.9%のお客さまがEDLPの価格政策が魅力的と答えた。値上げ傾向が続く中、価格を据え置くプライスロックの取り組みを通じ、EDLPの価値をアピールする」と語った。