完全養殖本マグロ 純国産と持続可能性でアピール
イオン(岡田元也社長)は5日、グループのGMSやSMなど約2000店舗で完全養殖による本マグロの販売を開始した。トップバリュ グリーンアイとして商品化した「奄美うまれ生本まぐろ」は、水揚げから約2分で血抜きを行い、0~4℃の低温管理によって最短3日で店頭に並ぶ。初年度は約2カ月で3500尾の販売を計画している。環境配慮型かつ国産の本マグロとしてブランドを育成する方針で、来年度以降の増産を予定している。

完全養殖の本マグロとは、人工ふ化した親から生まれた養殖魚のことを指す。天然マグロに依存しない養殖サイクルにより、持続可能な生産を目指す。
イオンが商品化した本マグロは、マルハニチロが管理する奄美大島の生けすで育てている。エサに科学飼料を使用せず、丸魚などを与えている。生けすの周辺は年間を通じて海水温が安定しているほか、強い海流によって常に新鮮な酸素が供給されるなど、養殖に適した環境になっている。
水揚げから加工センターを経由して店頭まで、0~4℃の低温管理で運ぶ。マグロの解体ショーなどのイベントのために、店舗へ直送するケースもある。イオンリテールの女性パートには、マグロを解体できる人材が全国に100名ほどいる。通常は赤身・トロ・大トロの刺身や寿司ネタの一部として販売するが、カマやその他の稀少部位もさざまな方法で商品化していく。
イオン、ダイエー、マックスバリュなど約2000店舗で販売し、初年度は3500尾・売上高10億円を計画している。グループの本マグロ総販売額の5%くらいに相当するという。


イオンリテール食品商品企画本部長の土谷美津子取締役専務執行役員は、一般的な相場では養殖の本マグロと天然物の売価はほとんど変わらないという。太平洋クロマグロ(本マグロ)は昨年11月、国際自然保護連合が指定する「レッドリスト」で絶滅危惧Ⅱ類に指定され、日本でも漁獲量の規制が本格化している。イオンでも水産庁の基準に合わせ、本マグロの仕入れ制限を実施している。漁獲量が減少している本マグロで、持続可能な完全養殖の価値を訴求していく。
「今回の本マグロは味にも自信があり、来期以降はさらに増やしたい。また、完全な国産品という点も重要だ。国際的な認証を受けた水産物の環境配慮型商品には輸入品が多い。2020年の東京オリンピックに向け、環境にやさしい国産の魚を増やしたい。本マグロに限らず、さまざまな魚種で環境配慮型の国産品に挑戦したいと考えている」(土谷取締役)
日刊流通ジャーナル2015年6月8日号より抜粋