ローソン(玉塚元一社長)は、健康ニーズに対応する戦略商品として、高品質な青果物の拡充を進めている。各地の農業生産者との協業で「ローソンファーム」を全国につくり、土壌改良でミネラルバランスが整った野菜をつくる「中嶋農法」を導入していく。2010年の千葉に始まり、5月末時点で23カ所のファームを展開する。ファームの取り組みは青果物の栽培にとどまらない。ベンダー工場への原材料供給など6次産業化の取り組みも始まっている。

ローソンファーム拡大、6次産業化も推進
5月末時点でローソンファームは全国23カ所・耕作面積およそ179ヘクタールとなっている。13年度は6カ所、14年度は7カ所新設し、15年度もほぼ同様のペースで新規ファームを設立していく。16年2月末には30カ所を予定する。
今年3月に設立したローソンファーム新潟は、国家戦略特別区域に誕生した特例農業法人の第1号事例だ。地元の農業生産者などとの合弁会社で、ローソンは15%を出資している。この特区は大規模農業の改革拠点と位置づけられている。玉塚社長は、5ヘクタールでスタートした同ファームを、3年で100ヘクタールに広げる目標を掲げている。行政や中間管理機構との連携のもと、農地の集約を進めていく考えだ。
ローソンファーム新潟ではコシヒカリ・こしいぶきといった銘柄米を栽培し、初年度は約28トンの収穫を計画する。秋にはローソン店頭で販売するほか、中食の原材料としても活用していく。
また、野菜の露地栽培も行う予定で、将来はプロセスセンターを開設し、自社だけでなく各地の生産者から調達した青果物の加工場としても利用していく。加工した米や野菜は国内にとどまらず、海外にも販路を求めていく。
次世代の農業生産者と取り組む

新潟で構想している栽培から加工・販売まで一貫させた6次産業化の取り組みは、既に鳥取や千葉で具体化している。鳥取は、ローソンファームでは最大の56ヘクタールの農地を使い、おでん用のダイコンを栽培している。大山山麓の標高差を活かし、複数の畑を活用することでダイコンの収穫期間を伸ばしている。
農地の近くにダイコンの加工場を設け、おでん用の加工・パッケージングを行う。出荷した商品はローソンの物流システムに乗り、全国の店舗に供給される。
ローソンファーム千葉は、今年6月に香取プロセスセンターが本格稼働した。ニンジンなどの収穫物を加工し、ローソンの中食ベンダー工場に供給する。今後は近隣の契約生産者や全国のローソンファームから仕入れた農産物の加工処理も行う予定だ。
ローソンファームでは、このような6次産業化の取り組みを積極的に進めていく。ファームが加工設備を持つことで収益力アップや地域の雇用創出につながり、規格外品・余剰品などの有効活用も可能になる。また、ローソン全体にとっては独自のサプライチェーンを強化することにもつながる。
各地のローソンファーム経営者は、20〜30代が多い。農業生産者の後継者たちが、事業のさらなる発展を目指して参画するケースが増えている。ローソンも次世代を担う農業生産者の育成を重視している。高品質な青果物へのニーズが高まり続けるなか、日本の農業従事者は65歳以上が6割強を占めるといわれている。市場ニーズに合致した青果物を今、調達するだけでなく、将来にわたって安定的に確保することが戦略上の重要課題だ。
品質管理レベルを組織的に向上
ローソンファームは、16年8月までに全ファームのJGAP認証取得を目指している。取得を通じて組織的な品質管理体制を確立し、より安全・安心な青果物づくりにつなげていく。
JGAP(Japan Good Agricultural Practice)は、農業生産工程の管理基準(いわゆるGAP)のひとつで、農林水産省が推奨している。日本ではさまざまなGAPが作成されてきた経緯があり、複数の基準が存在する。このなかでJGAPは、農業・流通業で統一された管理基準を目指してつくられた。第三者認証制度による登録農場・生産法人数は、15年3月時点で2529件となっている。
最初の事例として、5月にローソンファーム兵庫がJGAP認証を取得した。同ファーム産のタマネギの商品パッケージに認証マークを付けて販売する。
ローソンファームで栽培する青果物は、地域ごとにそれぞれの特徴がある。前述のように鳥取はダイコン、新潟は米を中心とし、山梨では果樹に特化している。秋田のベビーリーフや茨城のブナシメジなど、路地ではなく施設内で栽培しているものもある。また、ニンジンやジャガイモといった購入頻度の高い作物は、北から南まで産地リレーを構築している。
今後も全国各地にローソンファームを広げていくなか、店舗数の多さに対しファーム数が少ない関東を重点エリアとしている。品種ではスイカやトマトなどの果菜類の強化を急ぐ。
ローソンの生鮮強化型店舗は、ストア100を含め現在およそ8000店となっている。チェーンのビジョンである「マチの健康ステーション」を追求するうえで、青果物での差別化は重要なテーマだ。ローソンファームや契約農家との連携により、品質の高い青果物を安定供給するためのバリューチェーンを進化させていく。
日刊流通ジャーナル2015年6月22日号より