エコス(平邦雄社長)は生鮮の専門店化を進めている。一部の店舗には生鮮カテゴリーキラーを誘致し、ノウハウの修得にも取り組んでいる。鮮魚部門での寿司の商品化など、専門店化のエッセンスを順次、改装店に取り入れている状況だ。これに加工食品も連携して、高質の生鮮品に合う調味料を揃えることなどで、プライスゾーンが広がっている。また売場全体で健康、安全・安心を訴求する商品を導入し、商圏内の顧客ニーズに対応する。シンボルマークの「ナチュライブ」によって、店舗のあり方を明確にしている。

昨年来の生鮮の相場高に加え、今年に入って、円安、原材料価格の高騰で加工食品の値上げが相次いでいる。「値上げは避けて通れない部分があるが、お客さまが買いやすい価格帯にしなければならないので、その調整に苦労した。昨年は相場高で1年を通してほぼ安定して売上を確保できたが、今年も同じことをやっていたのでは売上は伸びない。チラシを含めて、販売方法を変えていくことが必要だ」(宮崎和美 常務取締役営業本部副本長 兼 生鮮商品本部長)
生鮮はいずれも買上点数は微増だが、1品単価が上昇しており、明らかに二極化の動きがみられることを指摘している。部門別の動きで青果は相場に左右される要素があるが、精肉、惣菜は引き続き、安定しているという。「予想以上に伸びたのが鮮魚で、一昨年から動きが変わってきた。いずれにしても生鮮3部門は二極化が顕著で、商品構成をうまく変えていかなければならない。和牛はモノがなく、異常なほど、相場が上がっている。品質・数が安定したものを確保すると同時に、値ごろ感のある切り落としを商品化し、うまく埋め込んでいかないと利益がとれない。そういう形で、価格のバランスを出していくことが必要だ」(宮崎常務)
生鮮にあわせプライスゾーン拡大
値上げの要請が相次ぐ加工食品は、カテゴリーの動きや各社の提案に対し、販促などの条件を提示して対応している。齋藤直之取締役グロサリー部長はデフレから一転して、値上げという局面に際し、市場の動きをみて、実際に価格が上がっている実感が持てないことを指摘している。
「この20年、当社の商品部もお客さまも価格を下げる方向に流れていた。ハイ&ロー、EDLPを勉強し、価格を下げる商談にも慣れていった。いまのバイヤーは、ほとんど値上げの経験がない。値上げはメーカーによって、手法が異なる。新製品としてJANコードを変えて値上げするメーカー、業界がある一方、JANコードがそのままの場合もある。そうして値上げ後の市場環境をみた時、実際に値上げされたのかどうか、当社の店舗、競合店をみても判断し難いのが実態である。20年以上前の値上げの時には、現在ほど個店のEDLP売価は浸透しておらず、全店が統一売価で運用されていたため、それが見えにくいことを実感している」
価格の決定権を現場の店長、チーフに委ねており、個店ごとに競合に合わせて売価が異なるため、一律に価格が上がっていることが実感できないという。さらに、生鮮の二極化と同様、プライスゾーンが広がっている。
「いままでよりもプライスゾーンの幅を厚くすることは、お客さまの要望と言える。ひとつの店舗で、生鮮で上質な肉、刺身を売るのであれば、売れ筋のしょう油、たれに加え、ワンランク上のブランドが必要になる。実際にそういった商品を増やしているが、全店一律ではなく、店舗の特性に合わせて取り入れる。上質の加工食品はゾーニングとして入っているため、個店ごとに入れているわけではなく、すべてではないが5〜7割の店に配置することになる。売場の規模、尺数ではなく、そうした商圏、店舗クラスターに合わせた品揃えが必要だ」(齋藤取締役)
日刊流通ジャーナル2015年7月6日号より抜粋