
マルエツ(上田真社長)の小型店フォーマット「マルエツ プチ」は、都内を中心に現在63店舗を展開している。小ロットによる配送システムの構築や、専任マーチャンダイザーの配置などで、30坪後半から150坪前後の限られた売場に、幅広い品揃えを集積する技術を磨いてきた。上田社長は、「当社の標準である300坪型の縮小版をつくっても、魅力のある売場にはならない。アイテムの絞り込みではなく、多品種をいかに集積していくか、プチ用に積み上げてきたノウハウがある」としている。
マルエツ プチの商品供給は、すべて三郷複合センター(埼玉県三郷市)を拠点とする。グローサリーや日配の発注単位は1〜3個で対応しているものが多い。また、マルエツ プチの出店はさまざまな業種の居抜きであるケースが多く、専任マーチャンダイザーは、物件ごとに売場レイアウトや棚割を構築している。
上田社長は、「棚割ひとつをとっても、物件ごとにやり方を変える必要があり、標準化が難しい。物流の仕組みも含め、高コストなフォーマットだ。しかし、品揃えのためのコストは惜しんではいけないと考えている。1フェイスの陳列が増えても、品揃えの幅を優先する。絞り込みを前提とするコンビニとは異なり、手間はかかっても多品種を集積することでお客さまに支持される売場を目指す。多品種を扱っても、廃棄ロスは抑えられる。そこにプチで培ってきた仕組みのノウハウがある」という。
顧客が多品種の中から商品を探しやすくする工夫も積み重ねている。グローサリーの定番棚では、陳列スペースの関係で商品パッケージの正面を見せられないことがある。その場合、顧客が見つけやすいよう値札に商品画像を貼って対応する。また、通路が狭いため下段の商品は姿勢を低くしないと見えないこともある。今後、新たな器具を使って値札に角度を付ける実験を予定している。そのほか壁面やエンドを工夫して複数のプロモーションコーナーを設け、売り込み商品や話題性のある商品を訴求する。


300坪型も高密度な売場が基本
上田社長は、標準の300坪型にもプチで培った小型店のノウハウを活かしていくという。
「オペレーションや品揃えなど、すべてのシステムをプチからの発想で見直したらどうかと考えている。300坪くらいであれば、基本は高密度な売場づくりになる。その際、小型店のMDをベースに、足りないものは付け足すという考え方がいいのではないかと思っている。300坪は中途半端なサイズで、商品を詰め込むだけでなく、遊び的な要素も必要だ。また、売場が500坪以上になると、まったく別の発想が必要になる」(同社長)
300坪型の場合、イートインスペースを設けるケースが増えている。ただ、上田社長は必ず設置しなければならないものではないという。
「イートインを設けるかどうかを判断する際、300坪は規模としてギリギリのところだ。朝食需要を見込める店などイートインが必須の場合もあるが、品揃えのスペースを犠牲にすることでお客さまの不満につながることもある。商圏特性をみて判断する」(同)
日刊流通ジャーナル2015年7月22日号より