全日本食品(平野実社長)は9月、フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)の対象領域を生鮮品に拡大する。グローサリーではメーカー60社に対し、分析ツールを含めた販売データを提供し、IDデータの活用によるMDの改善に取り組んでいる。一方、加盟店の改装や出店支援にあてる本部予算を積み増し、経営サポートを強化する。また、日商10万円をモデルとするマイクロスーパーの多店化や、既存店を拠点とする移動販売の実験を通じ、買物不便地域における事業モデルの構築を目指す。

平野社長は、IDデータの分析が潜在ニーズの掘り起こしにつながると指摘する。POSレジによるPI値の分析では売れ筋を把握できても、個々の顧客ニーズは把握できないという。
「どれだけPI値の高い商品であっても、すべての顧客が購入するわけではない。その商品を購入しない顧客のニーズはとらえられない。購買情報はIDデータでなければならず、それに基づき個々のニーズをどう把握していくか、本部はそのための機能を磨き続けている。潜在ニーズを掘り起こしていくことが分析の重要テーマだ」
IDデータの分析に基づき、品揃え・売価の最適化を追求する。15年8月期は加盟店トータルで前年実績をクリアする見通しで、全国的に売上は堅調だ。ただ、価格に対する生活者の意識はいっそうシビアになっているという。
「昨年、飲料の売れ筋NBで500mlサイズの価格を3円上げたところ、売上は6割に落ち込んだ。売れ筋の値付けを間違えると、お客さまの反応は厳しい。価格面で信頼を失うと、あてにされないお店になってしまう。売価の設定は従来以上に慎重でなければならない」(平野社長)
今期は主要メーカー60社に分析ツールを含む販売データの提供を始めた。メーカーはウェブ経由で全日食の分析ツールを利用できる。
「全日食チェーンのカード会員は全国で150万人にのぼり、国内世帯数の約3%に相当する。店舗網が全国に広がっている我々の会員データは、日本の縮図として十分な価値を持つ。エリア別にデータをみるなど、さまざまな分析が可能だ。メーカーの活用状況は、企業によってバラつきが大きいと感じている。当社からも積極的に使い方を提案し、もっと有効活用したい」(同社長)
新年度がスタートする9月から、FSPの対象を生鮮品に拡大する。データを把握するため、対象商品は全国に拠点を設けた生鮮MDセンターからの供給が基本となる。それ以外の商品も含めて分析精度を高めるため、加盟店と共に商品コードの集約を進めていく。
日刊流通ジャーナル2015年8月21日号より抜粋