協同組合セルコチェーン(佐伯行彦理事長)は今期、教育研修セミナーの充実を目的に「セルコクリエイティブセンター」(東京都国立市)を新設した。店長や各部門の主任、女性リーダー候補向けのセミナーを開催する。参加者のマネジメント力や技術レベルの向上に加え、同じ職務の他社社員との交流を通じ、互いに刺激し合える仲間づくりを目指す。佐伯理事長は、加盟企業間で刺激を共有すると同時に、各社のトップは早期に自社の目指す方向性を明確にすべきという。

セルコクリエイティブセンターは、生鮮・惣菜の実技研修に使用するA棟と、座学を中心とするB棟に分かれている。さえき営業本部の一部を改装したもので、JR南武線・矢川駅から徒歩3分に位置する。店長セミナーをはじめ、生鮮・惣菜・グローサリー部門の主任、レジ部門、女性リーダーの育成など9つのコースを用意している。
佐伯理事長は、セミナーの目的は刺激を受け、職務に関する学習意欲を高めることにあるという。「知識・技術を得る以上に、仲間を得ることが学習意欲を継続的に高めることにつながる。我々のセミナーでは、生鮮技術に秀でた加盟企業の主任が講師になることもある。同じセルコのメンバーからも知的刺激を受け、参加者それぞれが新しいものを生み出す原動力にして欲しい」(同理事長)
生鮮の技術レベルで大手に対抗
佐伯理事長は、消費税率がアップした昨年4月以降、首都圏に限らずSMの収益は改善傾向にあると指摘する。
「価格表示を外税にしたことの効果は大きく、今期も各社は健闘している。チェーン規模の大小に関わらず、SMにとっていい流れになっている」(同)
こうした環境にあるからこそ、セルコ加盟チェーンのトップは自社の方向性を明確に打ち出すべきという。「学び合うなかでも、自社のカラーが明確でなければ真似するだけになってしまう。どういう店にしたいのか、業界の中でどういった立ち位置を目指すのか、トップは決断する好機にあると思う。さえきセルバホールディングスに関していえば、お客さまの健康寿命を伸ばすことに貢献できるよう商品づくり・売場づくりに取り組んでいる。理想までは遠いが、そこは学びながら追求していく。自社の立ち位置を明確にして強い店を目指すことにより、見える景色も変わってくる」
SMにとってフォローの環境といっても、人口減少によってマーケットの拡大は望めず、中小チェーンにとっては出店に慎重であるべき状況に変わりはない。そうしたなか、生鮮・惣菜を軸に地域密着を図ることで、大手との競争に負けない店づくりを目指す。生鮮を中心とする食文化には地域差が大きく、スケールメリットが活きる全国規模のマーケットが存在しない。この分野で独自性を磨くことが、中小の生き残り戦略の根幹となる。
佐伯理事長は、「SMで最大の来店動機は、今日食べるために新鮮な生鮮、質の高い惣菜があるかどうかだ。生鮮・惣菜の買物基準に応えることが重要だ。生鮮の加工技術が高いチェーンは、小規模でもエリア内では強い。グローサリーのバイイングパワーでは大手に勝てないとしても、生鮮のレベルでは対抗できる」という。加盟社がそれぞれの生鮮・惣菜の技術を高められるよう、前述のようにセルコクリエイティブセンターでの交流を活かしていく。

日刊流通ジャーナル2015年8月24日号より抜粋