顧客・配送車の位置情報を把握するシステムで実現
楽天(三木谷浩史会長兼社長)がこのほどスタートした食品・日用品の配送サービス「楽びん!」は、都内4区にまたがるエリアを対象に、注文から最短20分で商品を届ける。注文方法はスマートフォンの専用アプリに限定し、商品を積載してエリア内を周遊している配送車が届ける。顧客・配送車の位置情報をリアルタイムで管理するシステムにより、短時間での配送サービスを24時間体制で提供する。収益モデルの確立が課題となるものの、食品・日用品のEコマースにおけるラストワンマイルの仕組みとして斬新なスキームを構築した。

同サービスでは約450アイテムを取り扱う。飲料・酒類・おつまみ等のコンビニ商材と、洗剤やペーパー類などのドラッグストア商材、楽天市場の人気スイーツなどに大別される。各商品の売価は、コンビニやドラッグストアの実勢価格に合わせている。配送エリアは渋谷区、目黒区、世田谷区、港区にまたがるエリアで、ビジネス街を中心とする。注文確定から最短20分で配達するサービスを24時間体制で提供する。
短時間での配送を可能にするポイントが、配達先と配送車の位置情報をリアルタイムで把握するシステムだ。注文はスマートフォンの専用アプリに限定し、初めに配達場所を指定する。注文内容が確定すると、エリア内に配置された複数台の配送車両の中から、宅配先に向かう車両を決定する。配送車が積載する在庫情報もリアルタイムで把握し、必要に応じて拠点倉庫で補充する。
利用客は、15分間隔で設定される配達予定時刻や、配送車の位置情報をアプリを介して確認できる。アプリ画面には配達スタッフの氏名も表示される。商品の受取場所は事前登録した自宅に限らず、どこでも設定できる。
1回の注文は税込980円からで、支払いはクレジット決済のみとなる。また、配送料金は受取方法によって異なる。利用客が配送車まで取りに来る場合は税込390円、配達スタッフが玄関先など購入者のもとまで届ける場合は770円となる。購入客は、前述のように配達予定時刻だけでなく、配送車がどこにいるかを把握できる。これにより、到着した配送車のもとまで商品を受け取りに行くことが可能となる。なお、配送車のもとへ受け取りに行く場合に限り、2500円以上の購入で配送料が無料となる。
商品受取の課題 配達時間の劇的な短縮で解消
「楽びん!」のサービス内容は、Eコマースの課題である配達までに要する時間と、受け取りの手間の解消を目指して構築した。
新サービス開発室の中西勝也氏は、「Eコマースを利用されるお客さまの声を調査すると、受け取りの日時指定をしたい、その日時を変更したい、配達時間の事前通知が欲しい、とにかく早く欲しい、夜間にも届けてほしいなど、受け取りに関わる要望が上位を占める。受け取りにご不便を感じていることは明らかであり、これらを解消する必要があった。注文し、その場にいる間に届けることで不便の解消を図る。どのくらいの時間内で届ければ便利か、お客さまの声をもとに最短20分という仕組みを構築した」と語る。
サービス対象エリアの設定について、物流事業経営企画部の品川竜介部長は次のように語っている。
「スマホユーザーが多いことや、時間を重視する多忙なビジネスマンが多いエリアとして、都内4区を設定した。今後の事業展開は、これからの検証を踏まえて決定していく。エリアの拡大方法や時期などは白紙の状態だ」
楽天の直営事業として、ビジネスモデルの構築を目指す。
日刊流通ジャーナル2015年8月26日号より抜粋