オールジャパンドラッグチェーン(AJD、杉山貞之本部長)は、量を求める共同仕入機構から、質に重きを置く共同販売機構へと転換を図る。定評のある医薬品や雑貨の開発も底上げし、食品を含む商品全般の販売力を高める。昨年に食品の販売で全日食チェーンと提携したが、システムの違いから一部加盟社との取り組みにとどまっていた。ただ、取り組んだ店舗は利益改善の効果が出ており、今後は双方のノウハウを共有し、「ドラッグ+食品」の新MDパッケージの提供を目指す。

共同販売機構への転換の狙いについて杉山本部長は、「大手加盟社が急成長する中、近年の活動は規模のメリットを得やすい仕入量を重視してきた。その結果、大手の主張が通りやすくなる一方、中小の参加率が低下する事態にもなった。仕入機構から販売機構への転換は、大も小も等しく良い知恵を出し合い、メーカーと一体となり商品を開発し販売するものだ。量の責任から逃れることなく、AJDの原点へと回帰する試みとなる」という。
AJDは、医薬品や雑貨における高品質・高付加価値の商品に定評があり、それが加盟社の利益の源泉ともなってきた。
今後は販売機構という考えのもと、食品を含む幅広いカテゴリーの開発で独自性を打ち出す。規模の大小を問わず売れる商品で販売力を底上げし、加盟社ならびに取引先にも利益を還元する。
食品の最適価格戦略が強み
近年のドラッグストアは、利便性で来店頻度を高めるために、食品の品揃えを拡大する傾向にある。AJDにとっても、食品の強化は求心力を維持する上での課題であり、その方策の1つとして2014年2月に、食品SMのボランタリーチェーン(VC)である全日食チェーン(全日本食品、平野実社長)と業務提携している。
全日食は主に独立系の小規模SMが加盟し、加工食品やチルドのNBと生鮮アウトパック商品を一括提供している。完成された発注・物流のシステムを持つため、ドラッグストアが必要な商品を部分的に、またはチェーンの特定店舗に供給することが難しく、現状はAJD加盟9社の一部店舗による実験的な取り組みにとどまっている。
また、全日食のMDをそのままドラッグストアに当てはめると、近隣のSM等と同質競争に巻き込まれるケースもあるため、双方のシステムのすり合わせに加え、AJDにメリットをもたらす新たな食品のMDを構築することが新たな課題となっている。
なお、実験を始めた店舗のオーナーらは、「全日食商品の導入を機に、店舗段階の荒利益が格段に向上した」と口を揃える。その1社であるスギヤマ薬品の杉山貞之社長は、自社の取り組みを踏まえ、以下のように語っている。
「多くのドラッグストア企業は、食品は医薬品を売るための客寄せだという考え方を脱却できずにいる。一方で全日食の強みは、食品の最適価格戦略にある。何を幾らで売ればどれだけ利益が残るのか、小規模SMが生き残るための知恵を持っている。
当社スギヤマ薬品も、3店で全日食の食品を実験している。現場作業の重複等の問題はあるが、確実に廃棄等のロスが減り、部門の荒利益率が改善している。この効果をAJD全体でも活かせるよう、客数あるいは荒利益を確保する方法について、このほど話し合いが始まった。特売ではなく定番化をベースに、ドラッグ商材+食品のMDパッケージをつくっていきたい」という。
日刊ドラッグストア2015年9月24日号より抜粋