バローホールディングス(田代正美会長兼社長)は、今期からの中期3ヵ年計画では、バロー(SM)の構造改革を軸に、ホームセンターバローと中部薬品(Drug.S)を成長ドライバーに位置付けている。SMでは、前期までに整備してきたDC、PCのインフラが一段落したことで、その稼働率と生産性を高める。また商品構成の改革をめざした改装にも取り組む。以下は田代社長の発言要旨である。
精肉PCは今年8月、岐阜県可児市に5番目となる「可児PC」を稼働させ、全店のネットワークが整備された。
この結果、これまでPCと店舗にダブルで人員を配置していた一過性経費がなくなった。だがPC網の整備は、短期的ではなく長期的な視野に立って取り組んでいる。店舗の商圏はますます小さくなっており、要員の採用も難しさを増している。今後さらに商勢圏を拡大する意味でも、構造的にPC化を進めることは絶対に必要だ。
当社は10月1日付でHD体制に移行した。これまでバロー単体に含まれていたSMとHCを別々の事業子会社として分離した。
その効果はHCで顕著に表れており、業績が非常に好調だ。これまでHC独自の経営数値は明らかにされていなかったが、分離したことで方向性が明確になった。まだ36店と規模は小さいが、対面販売を重視するなど、大手HCにない小回りのよさがお客さまに支持されている。
またDrug.Sも売上、利益ともに2桁増と好調に推移している。スポーツクラブ(アクトス)も、SCから出店の要請が増えている。HC、Drug.Sは、まだまだ成長できると考えている。両業態とも、将来壁にぶつかる時期が来るだろうが、自らをどう変えていくかがポイントになる。
これに対して、SMは250店規模となり、DC、PCなどインフラ整備も一段落した。しかし今期上期でも、既存店は0.1%増とあまり伸びていない。他業態にシェアを奪われている。トータルでは、人材をはじめとして企業規模的な優位性はそれなりにあると考えているが、それがきちっと機能していないことが一番のポイントだと思う。目下、商品構成の改革を中心に、改装を通じて進めているが、この検証を重ねることで既存店でも3%程度の伸びを確保できるようにしたい。
SMはリセットの3年間
今期からの中期3ヵ年計画では、SMについては「リセットの3年間」と位置付けている。リセットすることで、売上、利益が下がっては意味がない。少なくとも5%から6%の成長は確保しながらも、構造的に体質を変革していく。そしてその後、もう一度急速拡大期に入りたい。そのためには収益構造をきちっと作り上げておく必要がある。
中部薬品は7、8年前、店がまだ少ないときに15店もの不採算店舗を閉鎖するなど大きなリセットを行った。そこからいまの成長が始まっている。
オーナー経営の場合、こうした長期的な手が打てる良さがある。これに対してサラリーマン経営ではとかく、短期的な手を打つことに終始しがちだ。短期的収益を求められる上場会社ではなおさらだ。バローでも、失敗の原因は全てトップにある。これは仕方がない。これを直すのもトップしかいない。この意味でいまSMの既存店が低迷している原因はどこなのかについては私自身わかっている。何故なら自分で考え、自分で実行してきたからだ。このため、どこに戻れば軌道修正できるかが分かる。
日刊流通ジャーナル2015年11月12日号より抜粋