全日本食品(平野実社長)は、日商10万円で採算が取れるマイクロスーパーの拡大を目指す。取扱商品を約1000アイテムに絞り込み、売場面積は10坪で運営可能な店舗モデルだ。加盟店の支援だけでなく、買物不便地域で商業ライフラインを維持する仕組みとして活用している。
14年10月、島根県雲南市の波多地区に1号店を開設した。廃校を利用した公民館の一角を売場とし、コミュニティ機能の1つとして住民組織が運営している。営業時間は午前10時〜午後6時となっている。
RS本部長の遠藤和則常務取締役は、「売上は着実に伸びており、収支は取れている。近隣には今春、別の住民組織が運営する2号店の開設を予定している。雲南市とは周辺でさらに何カ所かやる考えを共有している。対象となるのは人口減を課題としている地域なので、物件の問題はクリアできる。ただ、運営組織をどうするかがネックになる」という。
雲南市波多地区の取り組みは、県外の自治体からも視察に訪れている。物流は既存の仕組みで全国をカバーできるため、地域行政などとの連携のもと、運営組織の課題をクリアしていく方針だ。
移動販売のモデル構築へ
商業ライフラインの維持を目的とした取り組みでは、15年11月に移動販売の実験もスタートした。埼玉県坂戸市の直営店を拠点に、約1000アイテムを搭載した販売車を週2回、走らせている。移動スーパーを事業とする「とくし丸」と提携し、販売車は同社仕様の軽トラックを使用する。とくし丸は徳島県に本社を置き、全国27都府県でさまざまなチェーンに移動販売のノウハウを提供している。
坂戸市では現在、30件強を回る1ルートを月・木曜日に巡回している。販売車には生鮮を含む幅広いカテゴリーを搭載するが、酒類と冷食の取り扱いはない。
「事業モデルとしては1ルートあたり50件、日販5万円を想定している。ニーズが見込める地域の選定基準をつくり、加盟店を拠点とする方法でモデルを構築したい。立ち寄るのはケアセンターのような施設だけでなく、個人宅の玄関先にも行く。これからの高齢化社会を考えると、店まで来れない生活者が増える。そうした事態にも対応できるよう、今からノウハウを蓄積していく」(遠藤常務)

日刊流通ジャーナル2016年1月28日号より