イオン(岡田元也社長)は、東日本大震災の経験を基に、グループの非常時対応や、防災拠点としての店舗機能の見直しを進める。来期から災害時などにおける事業継続計画として、情報インフラの整備やサプライチェーンの進化、外部との連携などをテーマとした5カ年計画をスタートさせる。
取締役会議長の横尾博取締役は、「震災発生から可能な限りの手段で支援物資の運搬などに取り組んだが、なかには物流センターのシステム故障で物資のストックはあるのに運び出せないといったトラブルもあった。また、激しい地震は想定しても、津波まで考えた訓練はできていなかった。非常時に備えたシステムを構築するだけでなく、それを実際に動かせるように備えることの重要性を実感した」としている。
この5カ年計画では、取引先も参加する災害時用のポータルサイトを整備する。在庫や物流状況を一元管理するシステムにより、効率的な対応を目指す。
SC100カ所の防災機能を強化
また、SCを防災拠点として活用する体制を強化する。自家発電など災害時に備えた設備を持つSCは現在27カ所で、20年までに100カ所に拡大する予定だ。
グループ総務部の津末浩治部長は、「防災拠点の機能整備は4つのタイプに分けて行う。対策本部を兼ねたもの、都市型、地方郊外型、津波の一時避難所としての機能を備えたものに分類し、今後の新店はこれら4つのいずれかを前提に設備を整える」としている。
東北での経験は、今後予想される震災への備えに活かしている。震災発生時、2500名が避難したイオンモール石巻(宮城県石巻市)の経験を基に、イオンモール新居浜(愛媛県新居浜市)では疑似体験による訓練を企画した。また、14年オープンのイオンタウン釜石(岩手県釜石市)は、1階を駐車場、屋上を津波対策の避難所とするピロティタイプになっている。
村上教行東北代表は、「震災を機に、地域や行政とのコミュニケーションは今まで以上に深まった。地域住民も含めた震災対応の仕組みをつくり、それが機能するように運営していく。
被災地の課題はさまざまで、街ごとに、家ごとにも違う。丁寧に話をうかがいながら取り組んでいく。我々がやるべき重要なことは、やはり地域の産品を全国で、あるいは海外も含めて販売していくことだ。被災地は今も風評被害が残っているが、安全性は科学的にきちんと担保できる。そのうえで東北エリアの商品を提案していくことが、売場を持っている我々の大事な役割だ」と語った。
日刊流通ジャーナル2016年2月29日号より抜粋