ファミリーマート(中山勇社長)は、引き続き中食構造改革による関連カテゴリーの刷新に取り組む。昨年は弁当、おにぎり、調理麺、調理パン、おでん、カウンターコーヒーなど主要なカテゴリーの多くをリニューアルした。15年度から中食工場への設備投資を本格化しており、投資額は17年度までの3年間でベンダー各社とファミリーマートの合計で254億円に上る見通しだ。今期も原料や設備、製法の見直しによる新商品を順次、投入していく。
昨年から続く中食構造改革により、社会変化に伴って拡大が見込める中食ニーズへの対応を進める。商品本部長と物流・品質管理本部長を兼任する本多利範取締役専務執行役員は、食の外部化をキーワードに中食の市場性を説明する。
「高齢化や共働き世帯の増加で、家庭における食事の準備を外部に依存する比率が高まっている。この食の外部化で伸びているのは中食であり、外食産業は長いトレンドで見ると減少傾向にある。食の外部化を推し測るものとして、家庭の冷蔵庫の大型化が挙げられる。以前は容量450Lが一般的だったが、今では600〜700Lが珍しくない。その日に使う食材を高頻度で購入するスタイルから、簡便性のある商品をストックするスタイルへの変化が見て取れる」
15年度は、新設備の導入による製法の革新や原材料の見直しにより、主力カテゴリーを順次、リニューアルした。「おむすび」は食材・炊飯の工程を見直すと同時に、工場での製造立ち合いや、店頭の陳列ケースの温度チェックなどで品質管理を強化した。また、専門店をベンチマークしたレンジアップのラーメンを税込500円前後で商品化し、秋冬に落ち込む調理麺カテゴリーを活性化した。
本多取締役は、単品の強化がベンダー工場の収益改善に寄与したという。
「ベンダー工場は利益率3%を確保できる見通しで、そうなると積極的な設備投資が可能になる。15年度の取り組みは設備投資が十分ではないなかの緊急措置的なところもあった。総合工場でやらざるを得なかった部分を温度帯別の専用工場にすることで、より付加価値の高い商品づくりが可能になる。こうした温度帯別の専用工場は現在4カ所で、既存の工場をさらに整備していく」(同取締役)
また、4月には原材料の調達会社を新設する。1500億円規模の調達を一元管理し、トレーサビリティの向上や取引先の業務効率の改善につなげる。
日常の中食ニーズを基本に、プチ贅沢ニーズにも挑戦
今期の新商品の1つが弁当の「炙り焼き」シリーズだ。22日に発売した「牛カルビ重」(税込530円)、「帯広風豚丼」(498円)は、直火調理で肉に焼き目をつくる。香ばしさが増すだけでなく、見た目の印象度を高めることをねらった。
「食の外部化をねらう市場は、業態の垣根のない戦いになる。コンビニの商品だからといって、見た目でデパ地下に負けることは許されない。見栄えは、おいしさを決める要素の1つとして大切だ。また、焼肉は以前なら一律に高温で加熱していた。安全面では間違いないが、豚肉を美味しく焼くには温度が高すぎた。この守りの姿勢を改め、安全なことはもちろんだが、美味しさを追求する攻めのQC(クオリティ・コントロール)を実践していく」(同)
中食強化を担うのは、米飯や調理パン、調理麺、パン、デザートなどを管轄するデリカ食品部が中心だが、サラダやレトルト惣菜、日配を扱う生活デイリー部も、食の外部化に対応する商品を拡充していく。
今期は新シリーズ「ファミデリカ」を立ち上げ、おかず・おつまみ、副菜となる商品群を刷新する。スタンドパックで商品化していたポテトサラダなどはトレー容器に変更する。また、焼魚や和風総菜など、小容量で組み合わせを選べるシリーズとして展開していく。
「当社のデリカテッセンは、3階建で行く。1階は家庭にいつもある常備菜で、もう1品のプラスとなる商品を考える。2階は毎日のおかず・おつまみ、3階は少し贅沢な自分へのごちそうを考える。とくに3階は、今まで当社の取り組みが弱かった部分だ。昨年のクリスマスにローストビーフを商品化したところ、デリカでは最も売れた。身近で日常的な業態であるコンビニにも、3階部分の商品が求められていると感じた」(同)

日刊流通ジャーナル2016年3月28日号より抜粋