バローホールディングス(田代正美会長兼社長)は今年11月、大胆に絞り込んだカテゴリーを思い切って強化した新しいSMの実験店を開設する。また2009年4月にオープンした「師勝店」(愛知県北名古屋市、売場面積400坪)を1号店とするEDLP志向の業態は現在7店だが、商品構成などで店長に大幅に権限を持たせたことで業績が好調に推移しており、今後店数を増やしていく。
バローHDは2015年度を初年度とする中期3ヵ年計画を推進しており、「経営効率の改善と次なる成長基盤の確立」をめざしている。最終年度となる2017年度は、営業収益5500億円、営業利益210億円、営業利益率4%の達成を見込んでいる。
田代社長は中期計画の進捗状況と今後の戦略課題について次のように語る。
「中期計画における最も重要な課題は、第1にSMの構造改革による収益力の改善であり、第2にDrug.S(中部薬品)、HC(HCバロー)の業容拡大である。
地域特性に対応したMD追求
SMの構造改革では前期、出店を抑制して地域性に対応した商品構成に改善するための改装に力を入れた。だが、まだまだ不十分なことを実感している。今期の最大課題は、こうした地域ごとの特性に対応したMDをさらに進化させることである。
例えば精肉にしても、豚肉が中心の地域、牛肉が中心の地域というように地域性がある。また所得の地域格差もある。以前はこうした点にそれほど配慮せず、平均的なSMを出店してきた。だがオーバーストアが常態化してくると商品構成で特徴のないSMは、お客さまに見放される。
この10年間、鮮魚に対する消費需要は減り続け、逆に精肉が伸びている。これからは売場構成もこうしたデータを参考にしながらダイナミックに変化させねばならない。
この意味で今年11月、新しいSMのフォーマットに挑戦する実験店を開設する。この店では、カテゴリーキラー的な要素を強く打ち出す考えだ。いまは通常のスタンダードなSMよりも、こうした特色のあるSMが求められている。
バローグループの中でも、商品を絞り込み、その日に仕入れた商品をその日に売り切る『タチヤ』の業績が好調だ。タチヤのよさは、仕組みが非常にシンプルなことだ。お客さまが店に入ったときに『買おう』というスイッチが入る。このように『買わなければ損』という店をこれから作っていきたい。
先日もアメリカを視察したが、大手ナショナルSMよりも、『トレーダージョーズ』のような小さいが特徴のある店の方が『買おう』という気になる。売場面積が広いことと買上点数とは必ずしも比例しない。
バローグループでも、バローのSMよりもタチヤに出店して欲しいという声を結構聞く。今朝もタチヤの幹部が、『バローのSMの近くに出店したい』と言ってきたので、『どんどんやりなさい』と言った。このようにドミナントの考え方にしても、いくつかの業態を組み合わせてトータルでドミナント化していくというように変わってきている。
日刊流通ジャーナル2016年5月18日号より抜粋