
いなげや(成瀬直人社長)は今期からの中期2カ年計画で商品による差別化を明確にする。社内では商品経営、マネジメントからマーケティングカンパニーへの転換と称している。この数年、毎年50店強の改装で取り組んできた惣菜プラス生鮮の強化を深堀りするほか、日配品やグローサリーで地場商品やこだわり商品のウェイトを高めていく。これを通して、いなげやのブランドイメージの向上を図る。新年度の4月からブランド向上委員会を立ち上げ、地域の顧客をはじめステークホルダーに企業価値をアピールする活動を始めた。
商品経営を進めることで、調達や取引先との関係も変わる。
「現在142店を展開しているが、いままでは販売する前提として142店分の商品がなければ取引しないという歴史が長くあった。従来の単品大量販売では、そういうことになる。最近の新店では地域商品を随分取り入れているが、1店だけしか仕入れないものもある。また10店、20店分しか入らなくても、いなげやの品質基準に合っていれば取引する。そういう考え方で、MDが少しずつ変わってきた。もちろんNB商品も積極的に売っていくが、地方にいい商品を出す中小のメーカーがある。そういったところは、丁寧なお付き合いをして販売していきたいと考えている」(成瀬社長)
最近の新店・改装店は商圏特性によって、こだわり商品の濃淡をつけている。昨年下期にオープンしたヨネッティ新ゆりヨネッティー王禅寺前店(川崎市麻生区、620坪)、ブルーミングブルーミーららぽーと立川立飛店(東京都立川市、679坪)はこだわり商品のウェイトが30~35%を占めるが、レギュラー店舗はその数値を10Pほど下回る。カテゴリーごとに特性が異なり、嗜好性の高いドレッシングは前述の2店で約50%がこだわり商品で構成される。
新しい食シーンを提案
今期に入ってオープンした金町店(東京都葛飾区)は474坪だが、SSMと同等の1万4000アイテム強を品揃えした。JR常磐線・金町駅から徒歩12分の工場跡地を開発したタワーマンションの一角への出店となった。至近には2013年に移転した東京理科大学、大規模な公園がある。
最近のSSMの店づくりを踏襲し、惣菜プラス生鮮の強化に取り組んだ。青果は旬の野菜・果物のボリュームを訴求する一方、ハーブ、スパウトなど品揃えの豊富さを打ち出した。また簡便性の高いカット野菜・サラダをコーナー化している。

日刊流通ジャーナル2016年5月17日号より抜粋