
広域対応の大型店、約200アイテムの限定商品を一挙導入
ヤオコー(川野澄人社長)は10日、売場面積833坪のららぽーと富士見店(埼玉県富士見市)を開設した。大型商業集積の核店舗として、従来にない広域商圏型の売場づくりを目指した。「あえて旗艦店という位置づけにはせず、同店限定のMDを多く盛り込んだ。小商圏・高来店頻度の標準フォーマットとは異なるが、今後の出店オプションとして可能性が広がった」(川野社長)。各部門がセミアップグレード商品群の進化を図り、限定MDの多くは高品質かつ値ごろ感を打ち出している。
ららぽーと富士見は、店舗面積2万4200坪に293店を集積する大型SCで、東武東上線・鶴瀬駅から北東へ約1.5㎞に位置する。川越市、ふじみ野市、志木市などがSCの商圏に入り、ヤオコーの既存店が多く含まれている。
川野社長は、「同じような商品を扱って既存店と競合しては意味がない。広域から集客できることと同時に、既存店とは違う商品を購入しに行くという来店動機をつくる必要があった。MDは日常性をベースに、非日常の要素を増やしている」という。
初年度は年商40億円を計画する。既存店で40億円を超える店舗は現在4店舗あり、将来はららぽーと富士見店を1番店に成長させる。
「これだけ大規模な商業施設のテナントとなると、固定費もかかるため絶対的な売上がないと収益は取れない。当社に50億円を超える店はまだないので、そこを目指したい。いけそうな手応えがある」(川野社長)
同店の客単価は1800円を想定しており、客数・客単価とも旗艦店のひとつ「ワカバウォーク店」(埼玉県鶴ヶ島市)と近いモデルを想定している。ただ、平均値は近くても、中身は大きく異なるという。
販売部長の小澤三夫取締役は、「月に1~2回の来店客と、頻繁に来店される層の二極に分けてMDを組んだ。両極の客層それぞれに対応することが課題であり、客単価の平均値に意味はない。曜日でいえば、土日は日商2000万円を超える必要がある。平日は、オープン当時の南古谷店(埼玉県川越市)がそうであったように、700万円を切る可能性もある。広域対応を中心としつつ、毎日でも来店いただけるお客さまを獲得することが重要だ」としている。

生鮮・惣菜一体型の発展モデル

店舗への出入口は1カ所で、833坪の売場は縦に配置した集中レジを境に、生鮮・惣菜を展開するゾーンと、グローサリー・日配ゾーンに大別される。1カ所の出入口といっても、花売場やピザをオーダーするカウンターが仕切りとなり、導入部の通路はデリカゾーンと青果ゾーンに分かれている。
小澤取締役は店づくりについて次のように語った。
「1カ所に限られた出入口でインパクトを高めるために、生鮮・惣菜一体型を選択した。作業場を併設した主通路の島は、これまで惣菜だけで構成することが多かったが、今回は側面の1つを青果にすることでデリカと青果のゾーンを明確に区切った。集中レジの位置は変則的だが、臨時のレジを含め22台分を配置するには他に方法がなかった。また、生鮮・惣菜一体型の旗艦店である東大和店(東京都東大和市、13年オープン)との比較でいえば、当時は不十分だったグローサリー売場を重点的に変えている」
惣菜売場の導入部には、対面形式のサラダステーションを配置した。カスタムメイド形式で、ベースとなるサラダに好みのドレッシングやトッピングを選ぶ。ドレッシングは9種類を揃えている。
同コーナーに隣接したピザカウンターは、オーダーを受けてから商品を焼き上げる。フルーツピザやシラスのピザなど、生鮮部門の素材を使うことで差別化する。ピザカウンターは、5点の買上まで対応するクイックレジにもなっている。
サラダステーションとピザカウンターにはオリジナルのコーヒーマシンを設置した。一般的なブレンドコーヒーのほか、デカフェ商品も提供する。新しいオリジナルブランド「Re」として展開するもので、カウンターコーヒーのほかグローサリーのレギュラーコーヒーも商品化している。今後、Reブランドのコーヒーマシンは一部店舗に、レギュラーコーヒーは全店導入を予定する。
生鮮ゾーンの最後にメニュー提案のクッキングサポートを配置した。当初は対面形式のサラダステーションと一体化する予定だったが、ヘルシーサポートをメインとするサラダステーションとは機能を分けて展開することにした。
食シーンの関連性でゾーン形成

クッキングサポートに隣接し、食品関連の雑貨と書籍を集めたコーナー「フードカルチャー」を新設した。ららぽーと富士見にも出店している書籍・雑貨専門店のリーディングポートJPとのコラボ売場で、ライフスタイル提案の新たな試みと位置づける。
川野社長は、「料理をより楽しんでいただくために、同コーナーのエッセンスを何らかのかたちで既存店にも広げたい。雑貨や書籍はもともと取り扱っているのだから、売場を変えていくきっかけとして今回の取り組みを活かしたい」としている。
グローサリー・日配売場は、従来のようにゴンドラの定番棚で展開するカテゴリーと、食シーンの関連性でゾーン展開するカテゴリーに分かれる。主通路ではパン食の関連でコーヒー・紅茶、シリアルなどをゾーンとして形成し、隣接してチーズ・生ハム関連コーナーを展開する。このチーズ・生ハムに連動してワイン・クラフト/輸入ビール・洋酒を強化した酒類ゾーンが続き、さらにオリーブ油・パスタなどのイタリアン関連につながっていく。
その先に既存店にも見られる駄菓子屋スタイルを核とした子供菓子や輸入菓子をコーナー展開し、最終コーナーには対面形式のチョコレート売場を設けた。店内加工を中心にさまざまなチョコレートを提供するもので、コーヒーと同じReブランドで展開する。



日刊流通ジャーナル2015年4月17日号より抜粋