
ハイグレード商品で百貨店ニーズの獲得めざす
イトーヨーカ堂(戸井和久社長)は4月24日、さいたま新都心駅前のSC「コクーン2」の核店舗として大宮店(さいたま市大宮区)を開設した。1984年オープンの旧店を移設したもので、直営は食品売場とキッチン用品主体の住関連、肌着ショップに集約している。近隣駅の百貨店に流出していた需要を取り込むため、各カテゴリーで従来のGMSにはないハイグレード商品を取り扱う。また、主要ターゲットと位置づけるヤングファミリーへの対応で、弁当づくりなどコト発想による提案型の売場編集に挑戦している。
旧大宮店が営業していた31年の間に商圏環境は変わり、既存顧客のシニア層に加え、子育て世帯が増加している。改めて商圏調査を行い、新店のMDに反映させた。
足立博之店長はMDの方針として、地域ニーズへの対応と、GMSの枠を越えた上質品の取り扱いをポイントに挙げる。上質品に対する商圏ニーズに関し、足立店長は次のように語っている。
「GMSの品揃えはここまでという既成概念を取り払い、百貨店クオリティーの商品を各カテゴリーに挿し込んだ。商圏内の平均所得は高く、近くの大宮や浦和駅前の百貨店で買物をされている方が多い。上質品の機会ロスが大きいことが商圏調査で明確になった。思い切った品揃えで、このニーズを積極的に取りに行く」
象徴的なのがワイン売場で、約400アイテムの中には1本120万円のロマネコンティを含む。ウイスキーや焼酎も高額品の品揃えを増やしている。対面売場を広げた精肉売場には、松阪牛や熟成肉、マンガリッツァ豚を揃える。チーズ売場も200アイテムを揃えて専門性を高めた。フランスチーズ鑑評騎士の有資格者を配置し、チーズの相性に合わせた生パスタや生ハムの提案も行う。
「よい商品は、よい接客を伴わなければ価値を伝え切れない。対面形式を増やすだけでなく、専門的な知識を備えた人材によって接客のレベルを高めていく」(足立店長)

コト発想による編集/子育て・有職女性がターゲット
もう1つの基本方針である地域対応の徹底では、まず地元商品を拡充しているほか、前述のように価格帯の幅を広げて商圏内のあらゆるニーズの取り込みを目指す。さらにSC全体の客層と合わせた施策として、ヤングファミリー向けに新たな売場づくりに挑戦している。
近隣には今後、小児医療センターが開設予定で、小さな子供を抱える世帯がさらに増加する見通しだ。こうした世帯の関心が高いアレルゲン対応品や有機、無添加系の商品を各カテゴリーで拡充している。
コト発想の提案型売場として、弁当づくりをテーマに食品・非食品のクロスMDコーナーを新設した。キャラ弁・デコ弁をつくる際に便利な商材・器具などに加え、関連書籍も置く。隣接して「おにぎらず」のテーマで関連品を集積するなど、売場編集にトレンドを反映させている。
「親子で弁当づくりのシーンを楽しんで考えてもらえる売場を目指した。商品選定はパートスタッフが主体となり、地元のお客さま目線で欲しいと思えるものを揃えている」(同)

ヤングファミリー層の比率と同時に、有職女性の割合も高い。忙しい生活者が多いことから、惣菜を核とする即食ゾーンも強化ポイントとなっている。なかでも女性をターゲットとした売場提案では、さまざまなサラダを揃える「iキッチン」コーナーを展開する。スイーツコーナーの拡充やスムージーコーナーの導入も、女性のニーズを踏まえたものだ。
また、健康をコンセプトに「スーパーフードコーナー」を新設した。ココナッツオイルやグラノーラなど注目の高い商品を盛り込みつつ、アンチエイジングをテーマにしたものなど幅広い世代のニーズに対応する。

日刊流通ジャーナル2015年5月7日号より抜粋