
イートインを起点に次世代の商品開発を検討
いなげや(成瀬直人社長)は4月25日、川崎市多摩区に川崎登戸店を開設した。300坪型の旧店を200mの距離にリプレイスし、590坪のSSMとしてMDの進化を図った。生鮮・惣菜で品揃えの幅を広げると同時に、加工食品も健康関連のスーパーフードや専門性の高い商品を随所に取り入れ、広域からの集客をねらう。またサービス機能の充実で、カフェを併設した80席のイートインコーナーを設けた。「商品の提供方法を見直すほか、イートイン用のメニュー開発につなげる戦略的なねらいがある」(成瀬社長)という。
80席のイートインコーナーは周辺にファミリーレストランをはじめ、飲食店が少ないことを配慮した。「地域のお客さまを集めて、メニューを広げることや店長を中心に地域密着型の店づくりができないかということを考えている」(島本和彦取締役販売本部長)。地域密着の機能として、AEDの使い方を始めとしたさまざまな講習会を通して、顧客にアプローチすることを意図している。
さらに、MDを根本的に変える戦略的なねらいもある。「あの場所で食べることをイメージできるものを開発していきたい。イートインコーナーでサービスが進化する一方、売場の方は遅れている。イートインコーナーを先につくって、商品提供が追いつくようにしたい。サラダバー、スープバー、寿司バーなど、いろんなものを社内で検討している」(成瀬社長)
また新しい売場づくりとして、生鮮の主通路にテーマを設定したグローサリーのアイランドを複数展開している。健康をテーマに、話題のアマニ油、ココナッツオイル、エゴマ油などのスーパーフード、青汁、ザクロ酢、ごぼう茶など女性に人気の高い健康関連品を集積した。スーパーフードは入口付近のエンドでアピールするほか、食用油の定番売場にも揃えた。
生鮮主通路のアイランドは、レギュラーのゴンドラを3連縮小して、通路幅を確保し、提案型売場の機能を担う。既存店で検証したところ、エンド展開よりも2割ほど、売上が伸びるという。「テーマによって異なるが、基本的には2週間で売場を変えていく。1カ月で商品の中身を変えていくという販売計画も併せて、1本当たりの目標金額も設定する」(島本取締役)

若い世代、高所得層をターゲットに
川崎登戸店はJR南武線および小田急線、登戸駅から北西へ約1.3㎞の車でアクセスのいい立地にある。2001年8月開設の旧川崎登戸新町店から200mの距離にリプレイスしたもので、しまむら、歯科医院、整骨医院、美容院などとNSCを形成する。旧店は300坪型で、4年ほど前にEDLPのウェイトを高めたina21に転換した。至近に用地を確保し、SSMとして再オープンすることになったが、店舗のあり方、オペレーションのあり方について、足立守正店長は次のように語っている。
「2月2日に店長を拝命し、非常に短い期間でのオープンとなった。周辺の調査をしたところ、予想よりもお客さまの層は若く、比較的所得が高い層も多い。商圏は多摩川河川敷で分断されていたが、川向こうからも集客を図りたい。商圏内には規模が小さい店舗が点在し、生鮮の品揃えが不十分で、500m圏を守って商売している。生鮮3品で十分に戦っていける。惣菜も売り方の工夫で、まだ踏み込める。提案の仕方という部分で、改めて担当者とコンセンサスを取りながらやっていく」
なお、旧店はドラッグストアのウェルパーク、100円ショップが入店し再オープンする予定だ。
青果は入口付近に、野菜を中心に地場商品を含めた「さんさん市」をコーナー展開している。今回、野菜、地場業者の菓子、漬物、めん類、納豆、豆腐に加え、地ビールも揃えた。ここの商品の開拓は商品企画部が担当し、店舗の要望も反映される。平台には、トマトコーナーやドライフルーツの量り売りコーナーを設けた。壁面も機能性野菜、スプラウト、生ハーブなど注目のカテゴリーを取り入れた。またカット野菜・サラダ商材に連動してチルドドレッシング、ディップソース、ハム・ソーセージ、カットフルーツの関連でジュレ、ジャム、ジュース、チルドのゼリーなど、加工品を増やしている。
第1主通路には、メニュー対応調味料を平台で展開し、生鮮素材購入のきっかけをつくる。鮮魚は平塚市場から調達し、価格・鮮度をアピールする。作業場をシースルー化することで、切り立ての鮮度感、ライブ感を演出している。またマグロコーナーは、本マグロを中心に揃える。


日刊流通ジャーナル2015年5月15日号より抜粋