取引形態の見直しや商品開発の内製化を推進
三菱食品(井上彪社長)は流通構造の全体最適の実現に向けて、メーカーとの取引形態の見直しや商品開発の内製化に取り組んでいる。さらに、成長市場への対応で4月に戦略市場本部を設置した。本格的に、海外、業務用、ウェルネスの3つの領域に参入する。経営統合によって三菱食品が発足した12年度に、売上高3兆円・経常利益300億円を目標とする中期経営計画2015を発表し、組織改編や経営基盤の強化に取り組んでいる。定量目標の達成は先送りとなるが、機能を高めることで経常利益率1%を優先する。
中期経営計画2015はバリューチェーンコーディネーターを目指し、既存事業の拡大・深耕戦略、事業領域を広げる成長戦略、中間流通の枠を越える業態変革・進化戦略の3つを進めることを骨子とする。その進捗状況について井上社長は次のように語っている。
「戦略の実行に向けて、体制整備を着実に進めてきた。また経営基盤の強化で統合後の拠点の統廃合あるいは人事制度の整備に始まり、全社的にBPRを実行し業務プロセスを抜本的に見直した。また大幅な営業組織の改編や地域子会社の機能会社化、連結経営基盤の整備など、経営の意思の浸透と営業力の強化というものを図ってきた。さらに人材の育成・活用の施策、あるいは教育体系の充実に加えて、次世代基幹システムの構築に着手するなど、将来への先行投資も開始している。しかしながら、十分な成果が現れていない。
中期経営計画発表以降の環境変化は想定を大幅に越えるものではなかったが、業界での既成概念、長年の商慣習を変えないといった抵抗勢力とのせめぎ合い、そして過去の負の遺産の整理に時間を費やしてきた。定量面でも、ようやく底を打って、意識改革も含めた体質強化がほぼ完了した」
2015年度は戦略実行のステージと位置づけ、売上高3兆円、経常利益300億円(経常利益率1%)の実現に向け、持続的成長を目指す。グローバル視点での全体最適を追求する一方、地域密着型小売業へのサポートも強化する。さらに、海外、業務用、ウェルネスを成長分野と位置づけ、組織体制を強化すると同時に、重点的に経営資源を投入していく考えである。
「まず食品流通全体の最適化に向けた機能強化で、メーカーとの取引を見直している。従来は売上に連動したリベートの契約が常識であったが、在庫ロス、返品の削減、そして適正な製造計画の実行によるコストダウンを図るための提案、企画を行う機能の対価としてのリベート契約へ変更することを進めている。また商品開発についても、われわれの機能強化を進めていく。小売の再編で、地域重視の流れというものが不足していく中で、流通全体でNB商品に依存したビジネスモデルは遠からず成り立たなくなっていくだろう。当社も今年4月に商品開発本部を設置して、開発機能の内製化に取り組んでいる。生活者のニーズを取り込みながら、原料から資材までの調達に関わり、製造工場を選定するといった一連のコーディネーターになったうえで、メーカー、小売双方にスピード感をもった機能提供を実現していきたい」(井上社長)
日刊流通ジャーナル2015年5月19日号より抜粋