ファンケル(宮島和美社長)が今期から3ヵ年の新中期計画を発表した。例年は売上高比率10%を目安とする広告投資に、3年間で200億円を追加して旗艦商品を育成する。同時に直営店と取扱店も拡大し、2020年3月期に売上高の倍増を目指す。投資負担の増加で今期は大幅減益を見込むが、次期以降に成長スピードが加速するイメージとなる。特に健康食品部門は先の機能性表示制度の追い風を受け、「5年後には再度、シェアトップに立ちたい」(池森賢二会長)と意気込む。

一時は名誉職に退いた創業者・池森氏が復帰したのが2013年初頭。同氏のもとに過去の負の遺産を1つ1つ解消し、全社一丸で新たな成長の芽を育んできた。赤字部門だったエステ事業と台湾・シンガポールの小売事業から撤退し、国内の不採算店を整理した一方、顧客視点の商品開発と売場・販売体制の見直しをすすめ、同社が「スター商品」と呼ぶ旗艦商品も、複数登場するようになった。
池森会長は、「懸念材料は一通り払しょくされ成長軌道も見えたが、今のままではスピードが遅い。知名度と製造研究設備、さらに手元資金をもっと活用して成長を加速するべく、新たな計画をスタートした」と語っている。
新中期計画の方針は、「戦略的な広告投資」「広告効果を最大化するための流通・店舗チャネルの拡大」「クロスセルの強化」の3つの柱で構成される。
広告宣伝費は07年3月期をピークに減少しており、2012年以降は売上高比率10%を目安に抑制してきた。「利益の確保を優先したため思い切った投資が出来ず、それが売上の低迷に繋がった。同業の広告の売上比率は20~40%と当社を上回り、多い年では60%以上だ。その後比率を下げても売上が伸び続ける傾向もみられる」(池森会長)という。
新中計では、売上比率10%の広告宣伝費に、3年間の累計で約200億円を追加投資する。内訳は化粧品50億円、健康食品150億円で、特に地方紙、ローカルTV、タウン誌など、これまで弱かった地方媒体での露出を高める。なお今期の広告宣伝費はトータル153億円(9割増)で、化粧品が65億円(5割増)、健康食品が67億円(約2倍)、その他が20億円(6倍超)を計画している。
先行的な広告投資により、新中計初年度の2016年3月期は増収減益を予想し、営業利益率は前期比約3P低下する見込み。それ以後は投資回収期間に入り、最終年度の2018年3月期は売上高1250億円、営業利益100億円(営業利益率8%)を目標とする。
さらに5年後の2020年3月期は、売上高1500億円以上、営業利益200億円(営業利益率約13%)へと収益力を高める。特に機能性表示制度で市場拡大が期待される健康食品について池森会長は、「科学的根拠に基づき製品を開発してきた当社にとって非常に有利」とし、「健康食品のパイオニアとしての自負もある。5年後には再度、シェアトップを目指したい」と語っている。
なお2015年3月期の業績は、売上高が前期比4.3%減の776億3200万円、営業利益が1.5%増の40億0100万円、経常利益が0.5%増の42億8300万円、当期利益が71.3%増の23億0100万円となった。
日刊ドラッグストア 2015年5月18日号より抜粋