
缶チューハイの革新から15年目

キリンビール「氷結」は、5月に累計販売数が100億本を突破した。01年の発売時に缶チューハイ市場を革新し、現在に続く市場のトレンドをつくった。同ブランドの中心価値であるすっきり飲みやすい果汁系のフレーバーは、今もRTDの主流となっている。
90年代後半、若年層は居酒屋チェーンなどで果汁系のチューハイやカクテルを楽しんでいたが、家庭用市場にはこういった商品が欠落していた。
開発メンバーの一員だったキリンR&D本部酒類技術研究所の鬼頭英明主任研究員は、「もともと缶チューハイの発想は、焼酎をいかにおいしく飲むかというものだった」と指摘する。
2年がかりの開発では洋酒・スピリッツや清涼飲料、パッケージ開発などグループの知見を総動員し、中身設計もパッケージデザインも斬新なものを目指した。居酒屋で飲むような果汁感を実現するため、当時一般的だった濃縮還元果汁ではなく、ストレート果汁を凍結させる手法を開発した。ストレート果汁のフレッシュさを活かすために、ベースとなる酒類は独特の香味を持つ焼酎ではなく、新たにウォッカを採用した。
「常温で管理できる濃縮還元果汁とは違い、ストレート果汁を扱うのはコストも手間もかかるが、リアルな果汁感につながる。その果汁に、純度の高いウォッカを白樺の活性炭で濾過して磨いたクリアウォッカを合わせることで、従来のチューハイとは違う味わいをつくり上げた」(鬼頭主任)
果汁感を活かす氷結の製法は、缶チューハイのフレーバー展開のあり方を変えた。従来はレモンが中心だったが、グレープフルーツのような新たな定番フレーバーを確立することにつながった。また、ダイヤカット缶と名づけた容器とスタイリッシュなデザインも、缶チューハイの従来イメージを刷新するのに効果的だった。
7月から100億本達成の記念販促

RTD市場は08年以降、7年連続で伸長している。この要因について、マーケティング部RTDカテゴリー戦略担当ブランドマネージャーの井本亜香主査は次のように語った。
「ビールと併飲するユーザーの増加により、自宅で飲む機会が増えている。年齢層が広がると同時に、⒛代の支持も以前より高まっている。『氷結』に代表されるすっきり飲みやすいメインストリームのほかに、さまざまなタイプが増えたことで選択肢も広がっている」
1-5月の累計では、「氷結」は前年の反動減もあり4%減となっている。ただ、高果汁チューハイの「本搾り」が38%増で推移するなど、RTDトータルでは14%増と好調を維持している。
夏場を迎え、今後は「氷結」ブランドの展開が本格化する。30日にはコンビニチャネル限定で「氷結アイススムージー」を発売する。昨年は首都圏エリア限定だったが、パイナップルフレーバーを加えた3品体制で全国に拡大する。7月1日からは100億本突破を記念した消費者キャンペーンがスタートする。毎週1万名に非売品の限定フレーバーが当たるもので、7週にわたり抽選を行う。
週刊流通ジャーナル2015年6月15日号より抜粋