
サントリービールは、カテゴリーのセグメントをビール・発泡酒・新ジャンルの3区分ではなく、プレミアムとエコノミーの2軸を中心に事業戦略を立てている。両極の一方には「ザ・プレミアム・モルツ」、他方には「金麦」を展開し、何年にもわたって市場シェアを伸ばし続けている。エコノミーカテゴリーは発泡酒・新ジャンルを合わせたセグメントで、「金麦」はシリーズ3アイテムでカテゴリー内の主要なニーズに対応する。
3つのタイプで市場ニーズに対応

ビールと比べれば、発泡酒と新ジャンルの実勢価格に大きな差はない。加えて新ジャンル市場の伸長が一段落したこの数年、新ジャンルと発泡酒を比較するような話題は以前よりも減っている。
ブランド戦略部の梅原武士課長は、「とりわけ糖質オフなどの機能系では、両カテゴリーの垣根は低く混在化が進んでいる。新ジャンルと発泡酒のユーザーは、価格差ではなく味わいや機能面で好みのブランドを選ぶようになった」としている。酒税区分によるカテゴリー分けにとらわれず、エコノミーカテゴリーの主力商品としてブランドを育成してきた。
「金麦」シリーズの販売数量は、14年が9.5%増の3632万ケースだった。07年の発売から伸長を続けている。売上の大部分が家庭用市場であり、チェーンストアでは不動の定番商品となっている。15年は昨年の消費増税の反動があったうえで、4月までの累計は5%増となっている。
シリーズは青いパッケージの「金麦」と、白が基調の「同糖質〈75%オフ〉、ビール類のシズル感を表現した「同クリアラベル」の3アイテムで構成する。本体は食事と楽しむしっかりとした味わいで、「同〈糖質75%オフ〉」はスッキリ軽やかな機能系、「同クリアラベル」はのど越し重視の爽快系となっている。
「エコノミーカテゴリーの嗜好は、味わい系・爽快系・機能系の3つに大別できる。07年に味わい系のブランドとしてスタートし、12年に〈糖質75%オフ〉、14年に〈クリアラベル〉を投入した。主要なニーズすべてに『金麦』ブランドで対応する」(梅原課長)
いつも選ばれることが定番ブランドの真価

徐々にラインアップを増やしてきた「金麦」ブランドだが、今後のラインアップに関して梅原課長は、「広げるか、広げないかは決めていない」と語る。ブランド戦略は、常にマーケットの状況を踏まえて決定するものだからだ。
ただ、今のビール類市場の流れでは、ラインアップのエクステンションには慎重な判断が必要という。
「マーケットは、新しい提案を欲する時期と、定番の安心感を求める時期を交互に繰り返す。変化に乏しいと飽きてくるし、変化が多過ぎると疲れてしまう。今は安心できるブランドで、間違いのない商品を選びたいという傾向が強いと感じている。『金麦』に関しては、定番の安心感を第一に訴えた方がいいように思う」(同課長)
ビール類の中でも屈指の販売ボリュームを持つメジャー感を前面に打ち出し、エコノミーカテゴリーにおける存在感をさらに高めることが基本方針だ。
梅原課長は、「目新しさで1回だけ手にとってもらうよりも、買い続けてもらえることが大切だ。定番ブランドは、目新しいから購入するわけではない。お客さまの共感を得て、日常の中で飲みたいブランドと思われなければならない。現在のブランドイメージを活かし、より多くの方から自分の生活シーンにふさわしいブランドと思われることが先決だ」としている。
週刊流通ジャーナル2015年6月15日号より抜粋