三井食品は、22日付で三井物産出身の藤吉泰晴顧問が社長に就任した。長原光男社長は顧問に就いた。今期からの2カ年を売上高1兆円に向けた基盤構築の期間と位置づける。輸入や地域商材、PB、惣菜、生鮮など独自性を打ち出せる商品・機能を提案し、メーカーや小売の要素・情報を取り込みながらコアの卸を強化する。

メーカー・小売の要素を取り込み従来型卸から脱却へ
長原顧問は11年6月に社長に就任した。11年3月期の業績は売上高5251億円だった。需要創造型卸を目指し、12年度から3カ年でカテゴリー・業態・エリアの3つの戦略を推進した。輸入商品や地域商材、PB開発のほか、資本業務提携して子会社化した藤徳物産(岡山県倉敷市)の惣菜工場を活用した惣菜や弁当の供給、三井物産のインフラを活用したカット野菜の供給など、機能づくりを進めた。同時に、独自性のある商品・カテゴリーを説明、提案しフィードバックをもらうという双方向のコミュニケーションプロセスを重視することで取引の拡大につなげた。15年3月期は売上高7537億円となった。
長原顧問は4年間を振り返り、次のように語った。
「卸は人間装置産業で、大きくなればなるほど、規模の不経済に陥りやすい。ただデフレが長引き、地方の疲弊した卸を吸収していく環境になり、逆に大規模化に突き進まなければならなくなった。製配販の垣根が低くなり、従来の卸の延長線上で成長は見込めない中、全国卸として生き残るため、輸入や地域商材、PBなどオリジナル商品の強化や、惣菜や生鮮を含む低温カテゴリーの拡充など、いろいろなことに着手した。3つの戦略を軸とした機能づくりが中期経営計画3年目で成果をあげ始めた。需要創造型卸の取り組みを深掘りし、売上高1兆円の目標を新しい経営陣に託す」
今期をスタートとする2カ年の中期経営計画で、商品・カテゴリー・業態の3つの戦略を推進する。商品はPB開発や輸入、地域商材の発掘に加え、ヘルスケア商材を強化する。カテゴリーは日配や家庭用冷凍食品のほか、青果、惣菜など低温分野のさらなる拡大を目指す。これらのオリジナリティのある商品や仕組みの提案で取り組みを深化させ、17年3月期の連結業績で売上高8571億円、経常利益35億円を目指す。
藤吉社長は、「14年度までの需要創造型卸への転換の取り組みを深堀りし、売上高1兆円への基盤強化の期間と位置づける。中間流通にこだわっていては成長できない。直近で食を通じて健康になるニーズが広がっているように、消費の変化がスピードアップしている。変化に対応するだけでなく、需要喚起を提案できる食のクリエーターの機能が求められる。三井物産が運営するイタリア食材に特化したイータリーの卸事業にかかわることもそのひとつで、メーカーや小売の要素・情報を取り込みながらコアの卸機能を強化し、従来型の卸からの脱却を図る」と話した。
2カ年の投資額は143億円を計画している。神奈川県相模原市に首都圏の基幹センターを開設するほか、次世代システム構築などに投資する。
<新社長略歴>▽藤吉泰晴(ふじよし・やすはる)氏、1957年2月12日生▽81年4月、三井物産入社▽98年6月、食料本部飼料畜産部飼料穀物グループ主席▽2000年6月、食料・リテール本部グローサリーMD部畜産MD室長兼低温食材MD室長▽09年4月、食料・リテール本部飼料畜産部長▽11年7月、食料・リテール本部穀物事業部長▽12年10月、食糧本部副本部長▽13年4月、執行役員食品事業本部長▽15年4月、三井食品顧問
日刊流通ジャーナル2015年6月25日号より