
チーズ市場は14年度、金額ベースで3~5%増と推計される。消費増税の影響に加え、春と秋に容量変更・価格改定を実施したものの、影響が小さく、SM・GMS各チェーンの販促強化につながった側面があった。またワインとのクロスMDに代表されるように、酒類とチーズを連動させた売場づくりが広がり、特にカマンベールやベビーチーズ、6P等のポーションタイプなど直食型商品の動きがよかった。直食型商品のバラエティ拡充とともに、モッツァレラの拡大やスライスチーズのプレミアム化など、新たなメニュー提案、価値訴求に取り組んでおり、今期も前年の勢いを継続している。
直食型商品が伸長
14年度の国内総消費量は微減だったものの、金額ベースでは前年をクリアしたと推測される。乳業メーカー各社は14年3月、スライスチーズやポーションタイプの6P、カルトンなど、プロセスチーズを中心に容量変更を実施した。スライスは標準容量が7枚(1枚減)になった。ボリュームが大きいスライスはPBなどが容量8枚を維持したため、当初は影響が大きかったものの、総じて下期以降は伸長し、トータルで前年をクリアした。またカルトンは漸減傾向が続いていたが、容量減にともない出荷価格を引き下げたことが奏功しマーケットは伸長した。
国産生乳の生産量減少や海外乳原料の需給逼迫による乳価上昇や、円安の進行、原材料・物流などのコストアップがさらに進み同8月、カマンベールやクリームチーズ、モッツァレラなど、ナチュラルチーズを主体に価格改定を行った。カマンベールやモッツァレラは単価アップ後も需要が落ちることなく、年間を通じて好調を持続した。調理用途の拡大で、モッツァレラはイタリアンサラダのカプレーゼの認知が拡大しており、売場では複数のブランドで品揃えの幅を広げると同時に、冷ケースの下段と上段で展開するチェーンが増えている。カマンベールは直食にとどまらず、耐熱用小皿にカマンベールと素材を入れて焼くメニューの「ココットカマン」のような食べ方提案が広がっている。
売場づくりにも変化がみられる。プロセスとナチュラルのくくりではなく、用途別の切り口で、直食型のベビーチーズやカルトン、クリームチーズのポーションタイプ、カマンベールなど、調理用途でカッテージやクリームチーズ、マスカルポーネをまとめる。さらにチーズの冷ケースを酒類と連動させる売場づくりも広がっている。
ボリュームが大きい一方、低価格志向が定着したスライスとシュレッドは価値提案で市場拡大につなげる。スライスで今春、プレミアム化をねらった商品が投入された。シュレッドではソースを配合した商品や、複数のナチュラルチーズをブレンドした商品、カットサイズの差別化などさまざまな切り口で新しい提案が続いている。
再度4月、ナチュラルチーズを中心に価格改定が実施された。今後は商品開発が遅れることも想定されるが、製配販が一体となって食べ方の拡大や価値提案を継続することで、さらなる市場の拡大が期待できる。
週刊流通ジャーナル2015年6月29日号より