
カルビーは、好調な「フルグラ」を軸に朝食市場の開拓を加速する。これまでヨーグルトとの組み合わせは食提案にとどまっていたが、乳業メーカーとのアライアンスにより事業化する。フジッコとの協業で6月24日、阪急うめだ本店に朝食をコンセプトとしたショップ「ヨーグラート by カスピア」を開設した。今秋には「やまぐち県酪乳業」と開発した個食タイプの「フルグラヨーグルト」を九州エリア限定で発売する。今後、中期スパンでシリアルの売上を500億円に伸ばし、ヨーグルト+グラノーラの「グルグラ」事業で100億円以上を目指す。パン、米飯に続く第3の朝食としてグラノーラを確立し、朝食分野でトータル1000億円を計画する。
「グルグラ」事業 乳業メーカーと協業で拡大

グラノーラだけでも市場の成長性は高いが、マーケットをシリアルに限定せず、広く朝食と設定することでさらなる成長につなげていく。同社が領域拡大を図る最初のカテゴリーは、グラノーラとの相性がいいヨーグルトだ。
「現在の流れを加速するために、ヨーグルトとグラノーラ、すなわち「グルグラ」事業を本格化する。最近のヨーグルト市場は、機能性を打ち出した商品提案が中心だ。機能性の魅力はもちろんあるが、それだけで食べる量が増えるかというと、限界があるだろう。持続的な市場拡大には、より美味しく食べられることが重要だ。グラノーラと一緒に食べる食スタイルで、新しい美味しさを提案する」(伊藤社長)
グルグラ事業は、乳業メーカーとのアライアンスで進めていく。フジッコと取り組む阪急うめだ本店の「ヨーグラート by カスピア」では、フジッコのカスピ海ヨーグルトとカルビーのグラノーラを個食のパッケージにした「ヨーグラート」(1個税込594円)を販売する。店舗の運営はフジッコが担当する。
今秋、やまぐち県酪乳業と共同開発した「フルグラヨーグルト」を九州エリア限定で販売する。やまぐち県酪乳業の工場で製品化し、カルビーが販売者となる。地方メーカーと組んだ商品展開で、ヨーグルト+グラノーラの個食タイプを地域に浸透させていく。また伊藤社長は、自社ブランドでの商品化を重視したと語る。
「大手乳業メーカーとの連携を考えないわけではないが、自社ブランドでの販売を優先し、それが可能なパートナーと組むことになった。今後もチルド物流は提携先の仕組みを活用することになる。自社でチルドの物流システムを構築するのはハードルが高い」(同社長)
8月31日に発売する期間限定品「フルグラ 黒豆きなこ味」は、きなこ味に焼き上げたグラノーラに黒豆、柿などを加えた和風グラノーラだ。同商品のプロモーションでは、豆乳ヨーグルトとの組み合わせや、和風レシピの紹介に取り組む。洋風イメージの強いシリアルを和風にアレンジすることで、ユーザーの裾野拡大を図る。
シリアルの売上が500億円となる時点で、グルグラ事業は100億円以上の売上を目指す。実現に向け、さまざまなアライアンスを検討していく。
時短、食物繊維、低塩分 朝食市場のスイッチ促す

カルビーの売上高2221億円のうち、スナック事業が85%を占める。グラノーラを軸に朝食分野の売上を1000億円に高め、経営の第2の柱に育成していく。
松本会長は、「シリアルで500億円、ヨーグルトで100億円以上、残りはまだ分からないが、フルグラを軸に何か考える。そうして朝食で1000億円の柱をつくりたい。毎年の積み上げ方式ではなく、『つくりたい』から始めるのが当社のやり方だ。『フルグラ』も30億円くらいの頃から、まずは100億円を目指すよう指示してきた」という。
売上1000億円の創出は、1兆7000億円ともいわれる朝食市場からの流入で実現させる。朝食の主流であるパンは、1兆2000億円前後の規模があり、家庭用市場だけでも1兆円以上ある。ここ数年で起きたグラノーラの急拡大は、巨大な朝食市場の数%がシフトした結果であり、さらに数%が移行すればシリアル市場は1000億円規模になる。カルビーは、このシリアル市場での高いシェアを核に、関連市場でトータル1000億円を目指す。

「フルグラは美味しい。しかし、ご飯も美味しいし、パンも美味しい。だから、美味しいだけでは朝食シーンは獲得できない。しかし第3の朝食であるグラノーラには、パン食からのスイッチを起こせるだけの理由がある」(松本会長)
そのひとつが「時短」の価値だ。欠食率の高い朝食だが、さまざまな調査のどれをみても、最大の理由は時間のなさにある。パンのように焼く手間もかからないシリアルは、最も短い時間で食べることができる。
第二の理由は健康性で、シリアルには穀類由来の豊富な食物繊維が含まれる。また、低塩分もシリアルの魅力だ。厚生労働省が今年改訂した基準では、日本人のナトリウム摂取量(食塩相当量)は男性で1日8g未満、女性で7g未満となっている。和食は総じて塩分含有量が多く、味噌汁は1杯で1〜2gといわれている。パンも6枚切り1枚で0.8gとされている。「フルグラ」は1食分にあたる50gで0.2g、ヨーグルトや牛乳と合わせても0.4gほどに抑えられる。
「グラノーラの優れた点を伝えていけば、朝食のシフトは必ず進む。また、当社だけではなく競合メーカーと切磋琢磨している市場であることも重要だ。競争によってコスト・価格が下がれば、移行はそれだけ進むだろう。シリアル市場で1000億円は、少しも非現実的な数値ではない」(松本会長)
週刊流通ジャーナル2015年6月29日号より抜粋