
ケミコスクリエイションズは、アイライナーのOEM生産・販売で国内№1シェアを誇る。高い技術力と魅力的な提案は、先行して欧米の大手ブランドに認められており、近年はアジア各国でも取引が急拡大している。このほど服部勝髙社長に、同社事業の変遷と中長期の戦略、さらに国内外の化粧品のトレンドについてうかがった。
服部氏は大学卒業後、原料メーカーとOEMメーカーに勤務している。原料メーカーで在庫管理、研究、営業を学び、OEMメーカーでは開発部長としてリキッドアイライナーの開発に携わった。従来のリキッドアイライナーはボトルと筆に分かれた「つけペン」タイプが一般的だったが、同氏は「文具の筆ペンの技術を応用すれば面白いものがつくれる」とひらめき、新発想の「ペン型リキッドアイライナー」を商品化した。
商品はまずアメリカに受け入れられた。大手ブランドが採用し、多い時は月間150万本を出荷している。この経験で自信を得て独立起業した最初の会社は、不遇にも取引先の突然の倒産に巻き込まれたが、自らの商品の可能性を信じて再度起業し、1996年にケミコスクリエイションズを設立した。今年は設立20年目の節目にあたる。
当時アメリカに販売したアイライナーの原料は酸化鉄で、時間と共に変色するなどの弱点があったが、2004年に同国がカーボンブラックの使用を認め状況が変わった。カーボンブラックは漆黒の発色で、インクの出がきれいで使いやすく、洗顔料で落としやすい特徴がある。この処方の活用で同社商品はさらに評価を高め、アメリカや欧州の大手ブランドに相次ぎ採用された。2007年には逆輸入の格好で、日本市場にも参戦している。

企業価値と国際競争力を向上
その頃の日本は「目ぢから」という言葉が流行っており、顔の印象を大きく変える同社のペン型リキッドアイライナーに国内コスメブランドから引き合いが殺到した。現在の同社シェアは国内販売数量の5割以上を占める№1で、競合メーカーとの差を広げている。
業績は毎年の2ケタ成長を維持し、この数年間は2~3割増で推移している。2014年6月期の売上高は約53億円で、うちペン型リキッドアイライナーの比率は7割にのぼる。今期売上高は65億円の到達を見込む。海外では韓国や中国の成長が著しく、両国にもグループ会社がある。
同社の強みについて服部社長は、「当社は30年ほど前に開発したペン型リキッドアイライナーのいわば専業メーカーで、処方と容器を同時に開発し、他の追随を許さないオンリーワン商品を展開している。日本のNBブランドは価格軸の商品開発が多くなったが、多少高くとも品質と付加価値を打ち出す当社の姿勢が、世界各国の化粧品展示会で高い評価を受けている」と語る。
海外の化粧品展示会に出展する日本のOEMメーカーが減少する中で、同社は毎年のように、まさに世界を股にかけてアピールしている。今年はすでにイタリア(ボローニャ)、タイ(バンコク)、ベトナム、韓国(ソウル)、中国(上海)、日本(横浜)の展示会に出展し、7月以降もフランス(パリ)、アメリカ(ニューヨーク)、香港の展示会に参加する。
もう一つの強みは、各国の文化や商慣習にあわせた柔軟な製造・販売体制を構築する一方で、核心の技術は門外不出とし、企業価値と国際競争力の向上に努めていることだ。
服部社長は、「かつて日本企業は先進の技術を提供してアジア各国から尊敬されているが、技術の習得や国力の向上とともに、その価値が薄れていった。双方の信頼関係を構築しつつ、技術に対する毅然とした対応が、世界で戦う上で重要なことではないか」という。
日刊ドラッグストア2015年6月30日号より抜粋