
エブリイ(岡﨑雅廣社長)は第1次、2次産業と連携した商品調達・開発によって、地域密着の地縁ストアづくりを志向している。グループとして農場運営に参入し今年6月、キャベツを中心に一部店舗への供給を開始した。自らバーティカルMDを実践することで、契約農家・産地を広げ、連携を進めることをねらいとしている。同様の主旨で、漁船の一艘買いも開始した。岡崎裕輔取締役商品部長は、MDも人間力がベースになることを指摘している。

15年6月期の業績は、既存店が前年比109.2%増と牽引したことに加え、より鮮度、専門性を強化した新フォーマットの「鮮Do!エブリイ」4店舗を新規出店し、早期に軌道に乗ったことで、売上高は前期比25%以上の606億円強、経常利益率4%超(前期は3.3%)と計画を上回る見通しだ。
MDの基本的な考え方について、岡﨑取締役は次のように語っている。
「当社は超鮮度、独自固有化、専門店化の3つの方向に向かっている。商品は生鮮と非生鮮に大別している。非生鮮は工業製品でNBが中心になり、圧縮しながら単品大量でローコストという大きな方向で考えている。売場で、その回りにある生鮮、惣菜、ベーカリーは3つのキーワードにより特化しながら、価格以外の価値を打ち出していく」
非生鮮で競合店の価格に合わせながら、生鮮の荒利ミックスによって、収益を確保していく考えだ。エブリイは高鮮度のものを必要な量だけ提供することに集中し、欠品ロスを認めている。それでもキャベツの芯に近い部分や魚のアラなどSMでは商品化しにくい部分を廃棄しており、これらをグループの外食などで有効活用し、さらなる改善を図る。結果として、生ゴミを減らし、環境にも寄与することになる。
HDとして最大の相乗効果を追求
昨年9月、エブリイホーミイホールディングスを設立し、持ち株会社体制に移行した。共同調達について、毎月開催する20人ほどのグループ商品会議で検討している。
「システム、物流についても、グループで調達することを前提に、つくり変える。この1年半で、当社のグループにとって理想的なものが完成するだろう。いままでのものは非生鮮の工業製品をいかに効率的に店舗に納品するかということを前提につくられている。われわれは、その逆で素材が生鮮、惣菜のほか、外食のメニューになり、それぞれ最大限魅力的な状態での提供を目指していく。そのために鮮度よく、ローコストで提供できるような仕組みをホールディングスという多様な販売チャネルの中で、相乗効果を最大限発揮できるような仕組みに変えていく」(岡﨑取締役)
グループの農業法人、アグリンクエブリイ広島が6月11日、キャベツを中心に福山エリアの店舗に供給を開始した。第一歩として、自社農場、産品を拡大するのではなく、高齢化によって基盤が脆弱化しつつある1次産業の実態を知ることを最大のねらいとしている。
「そうすることで、われわれ3次産業がどうあるべきかということを実感として、学ぶことが大切だ。6次化とか、生販一体ということがいわれているが、食品では難しい面もあると考えている。衣料品、住関連と異なりアイテム数が格段に多く、4つの温度帯があり、賞味期限もさまざまで、しかも菌の種類も多い。生と販が同じ目的でタッグを組んで、一気通貫でやっていくことが、われわれが目指す道だ。そのために1次産業の実態を理解しなければならない。当面の目標とする売上高1000億円の規模になったら、200億円の野菜、果物が必要になる。これを全部、自社で賄うのは不可能だ。契約農家、産地という形で仲間を増やしていくために、自分たちで一部、6次化で核となるものをもっている。
自ら生産することで、コスト改善や総収入アップの手法を開発し、このビジネスモデルの中で、タッグを組もうとすれば、仲間が増えてくる。もうひとつ、われわれには地縁店というテーマがある。1次産業と同様に、2次産業の地方メーカーも淘汰の波が押し寄せている。われわれといっしょにウィンウィンの関係になる共同体をつくっていきたい」(同)
日刊流通ジャーナル2015年7月10日号より抜粋