
淡麗、のどごし生 異なる個性でニーズを深堀り
糖質オフやプリン体カットなどの特徴を持つ機能系ビール類市場は、5月までの累計で20%増と伸長を続けている。現在、ビール類全体における構成比は2割近くを占めており、家庭用に限ればさらに高まる。昨年来、糖質ゼロ・プリン体ゼロ商品の投入で市場が活性化し、ユーザーの裾野は一段と広がってきた。キリンビールで機能系カテゴリーを担当するマーケティング部の中川紅子(こおこ)主務は、「今年に入って若い女性層が増えている。機能系のイメージが変わりつつあり、味覚の嗜好や求める健康価値も多様化している」と語る。
のどごしオールライト 明るく楽しむ機能系

健康志向の高まりと共に、機能系ユーザーは増加を続けてきた。ただ、健康への配慮からビール代替として飲む商品であるため、ロイヤルユーザーでも必ずしも味わいに満足しているとは限らない。ユーザーの多くは新ブランドが出るとトライアルし、最も気に入ったものをマイブランドとする傾向があった。
機能系の中ではブランドスイッチが頻繁に起きるものの、健康機能に関心の薄い若年層などからは流入が少ないマーケットだった。そうした市場に今年は変化が見られる。キリンビールが1月に発売した「のどごし オールライト」以降、若年層や女性の流入が増加傾向にある。
「のどごし オールライト」は、糖質ゼロ・プリン体ゼロに加え、カロリーオフ(100mlあたり20キロカロリー以下)を特徴とする。アルコール分は2.5~3.5%と低めに設定している。
「機能面の評価では、ダブルゼロはもちろん、カロリーオフへの評価が高い。そこが女性ユーザーの関心にマッチした。さらに重要なのは、『のどごし』ブランドの楽しい世界観を反映し、従来の機能系とは異なる明るくライトな健康イメージを伝えられたことだ。機能系でなければだめという切実さではなく、気兼ねなくゴクゴク飲めるという価値で20~30代女性を取り込めている。アルコール分が控えめな点も、酔いを残したくないと考える若年層にフィットした」(中川主務)
「のどごし オールライト」は、初年度480万ケースを計画する。6月途中で280万ケースを販売している。
本格感のプラチナダブル

ライトな健康感でユーザーの裾野を広げた「のどごし オールライト」に対し、ビール代替としての本格感で支持されているのが14年9月発売の「淡麗プラチナダブル」だ。
糖質ゼロ・プリン体ゼロの機能を押さえつつ、アルコール分は5.5%と高めに設定して飲み応えをつくり出す。発売後もビールらしい本格感の追求を続け、8カ月後の今年5月には大麦の使用量を増やすリニューアルを実施した。
「機能系商品の味覚に対する満足度は、やはりビールに比べれば低い。ブラッシュアップが重要であり、よりおいしいものを提供できるのであれば、早いタイミングでも中味をリニューアルする。ビール好きのユーザーに支持されているブランドなので、これからもビールらしい力強さを追求し続ける」(同主務)
発売2年目の今期は、14年実績の2倍に近い510万ケースを計画する。
情緒で差別化グリーンラベル
「淡麗グリーンラベル」は、14年実績で1584万ケースを販売した。機能系の№1ブランドだが、支持されているのは糖質70%オフの機能面だけでなく、味覚やパッケージデザインを含むトータルの世界観だ。
アルコール分4.5%、糖質70%オフというバランスは、機能の優位性とも本格感とも異なる同商品の独自性を象徴している。3月に実施したリニューアルでも、追求したのは機能面ではなく、仕込方法の変更によるおいしさの改善だった。
中川主務は、ブランドの独自性について次のように語っている。
「ユーザーは男性よりも女性が多く、若い世代のロイヤルユーザーが増えている。軽い感じで飲めて、十分な満足感を得られると評価されており、ゼロゼロの機能系商品とは価値のすみ分けができている。これまでCMキャラクターは男性ばかりだったが、ユーザー構成に合わせて今年は女性も起用した。グリーンラベル独自の情緒的な価値を発展させていく」
機能系商品のプロモーションは、それぞれ親ブランドの枠内で実施する。機能系で横グシをかけた販促は予定していない。
中川主務はその理由について、「ブランドが確立したグリーンラベルでは単独のキャンペーンも実施しているが、今は『淡麗』・『のどごし』のエクステンションとして訴求した方が効果は大きいし、親ブランドの活性化にもつながる」としている。
週刊流通ジャーナル2015年7月13日号より