ロゴQコードマーケティングの提供開始
チェーンストアが店頭で顧客に伝えられる情報量は限られている。メニュー提案や試食など、対面でコミュニケーションできることはあるとしても、商品やチェーンの取り組みのすべてをカバーできるわけではない。売場スペースの制約を超えて豊富な情報を伝えるため、多くの企業はウェブを活用する。携帯端末が進化し、どこでもネットにつながるようになって以降、気になったその場でウェブサイトに誘導できるQRコードが盛んに使われるようになった。
QRコードで誘導し、ウェブでより詳細な情報を伝えることで顧客の興味を高める。つまりQRコードは販促ツールとしての使用が一般的だ。この誘導プロセスの効果測定を詳細にできれば、マーケティングの精度向上につながる。ソフトバンク コマース&サービスが提供する「ロゴQコードマーケティング」は、QRコードをマーケティングツールに進化させるためのサービスだ。

MD本部クラウドマーケティング推進室の黒野源太プロジェクトディレクターは、QRコードで誘導するサイトの目的は、大きく3つに分類できるという。
「リンク先サイトの機能は、商品の詳細な情報を伝えることと、キャンペーン情報などを伝えること、割引などのクーポンを提供することが主なものだ。これらの目的を達成するうえで、QRコードからサイトへの誘導率は高いほど望ましい。また、効果測定が可能であれば、より良い施策を考えることにもつながる」(黒野氏)
5月に提供を始めた「ロゴQコードマーケティング」は、通常のQRコードにイラストや文字などのフルカラー画像を組み合わせ、デザイン性の高いコードを生成する。A・Tコミュニケーションズの特許技術を基に共同開発したクラウド型サービスだ。
QRコードにイラストや文字画像を組み込むメリットは、見た目の印象を良くするだけではない。リンク先の内容を一目で伝えることもできる。コードに「プレゼント」や「応募」と記載してあれば、キャンペーンサイトにつながることが明確に分かる。弁当などのパッケージに「原材料」や「栄養表示」などと書かれてあれば、リンク先で詳細な情報を得られると想像できる。
また、ネットを介して多言語対応サービスに誘導する際、印刷された掲示物は日本語が主体でも、QRコードに国旗のデザインを組み入れるだけでコードの意図は伝わるだろう。いずれも既に行われている活用事例だ。
ショッピングサイトへの誘導にもさまざまな活用が考えられる。分かりやすい視認性で誘導率を高めるだけでなく、サイズバリエーションのある商品の場合、コードに「L」、「M」などの文字を組み込めば、希望サイズの購入画面へダイレクトに誘導することも可能だ。
ロゴQコードの読み込みは、一般的なQRコードと同じリーダーやアプリで可能だ。画像を組み込む特許技術は偽造が難しく、コードのセキュリティレベルが向上する。


QRコードをID別に管理 クラウドでアクセス解析
ロゴQコードマーケティングでは、同じ画像をデザインしたコードに、複数の異なるIDをひも付けできる。これにより、QRコードは効果測定が可能なマーケティングツールに進化する。クラウドサービスで作成したロゴQコードは、管理画面でアクティブ・非アクティブを切り換えられる。この管理画面では、ID別にどのコードからアクセスがあったかを時間別・OS別などに把握できる。
「店頭イベントで、ロゴQコードの入った印刷物を配布したとする。このとき、店舗別にIDを設定しておけば、どの店での反応が良かったか検証できる。同じことは折り込みチラシやダイレクトメールなどにも応用できる。1つのQRコードにつき、ひも付けられるIDはさしあたり30までとしているが、実際には用途に応じて何万通りにもできる」(黒野氏)
従来、こうしたデータを収集するには誘導したサイトでアンケート調査を行う必要があった。もしくはQRコードごとに異なるリンク先を設定すれば可能だが、かなり大きな作業負担が必要となる。新サービスにより、QRコードによる本格的なアクセス解析を可能にする。
ロゴQコードに限らず、QRコードは顧客とネットをつなぐ窓口としてさまざまな可能性を持っている。チラシサイトへの誘導を考えた場合、マグネットなどに印刷して冷蔵庫に付けたり、会員カードに印刷しておけば、顧客はキッチンにいるときや買物に行く直前にもチラシ情報を確認できる。チェーンストアにとっては新聞購読率の低下への対策になる。
「当社が取り扱うサービスには、QRコードのリンク先を後から変更できるシステムもある。ひとつのQRコードから常に最新のチラシ情報へダイレクトに誘導することも可能だ」(同氏)
チラシ情報の提供などは、スマホアプリを開発しても同じことはできる。ただ、より多くの顧客からアクセスを獲得するには、デジタルだけでなくモノを媒介としたアプローチも必要になる。QRコードは既に普及した技術だが、用途の可能性はまだ多く残されている。機能の進化に伴い、さらに幅広い活用が考えられる。
週刊流通ジャーナル2015年7月13日号より