
創業60周年を迎えたキリン堂は、「100年企業」を目標に、既存ビジネスの確立と次世代モデルの研究をすすめている。今期は客数増加を狙いきめ細かい商品施策を実施し、コミュニケーションスキルとして血液検査サービスを全店導入した。さらに今後はインバウンド対策で得たノウハウを、ネットを含むアジア戦略へと振り向けていく。
次世代の事業モデルを構築
以下は寺西社長との一問一答の要旨である。
——創業60周年の歴史の重みをどう受け止めていますか。
寺西社長 長きに渡り存続できたことの感謝を噛みしめつつ、感謝を未来に向かってどのように形にしていくか、全社一丸で考え邁進していきたい。当社は創業者が第一線で経営を指揮する稀有な会社であり、創業からのDNAや魂をしっかり受け継ぎ、受け渡すことも大きな課題である。私自身は「100年企業」の土台をつくる創業者の気構えで、使命を果たしていきたい。そのためにも、今のビジネスをしっかりと磨き上げ、強固な経営基盤の上に、次世代の業態なり、新たなビジネスモデルを作り上げなければならない。
視点を変え、視野を広げる
——次世代のビジネスとはどのようなものですか。
寺西社長 業界の内から見れば多様なフォーマットに分かれるドラッグストアも、生活者から見れば大きな違いはなく、支持されるのは良いものを安く提供する店舗である。安さの追求は小売業の普遍的なテーマだが、その土台の上に、顧客起点の新たな方向性を導き、同質化競争を回避していく。
流通業は高度成長期以後に供給過多となり、価格競争に陥った。そして現在、訪日観光客の「爆買い」により、ブランド力の高い商品は供給不足が起きている。国内だけを見れば、少子高齢化や人口減でコモディティ市場の鈍化は避けられないが、視点を変え、視野を広げれば、まだまだ供給が足りない市場が存在している。
次世代の流通業は、再び供給側のパフォーマンスを高めることが重要になる。消費者側と供給側が対峙するのでなく、共存しながら、世界に目を向けていく時代が来た。欧米のチェーンストアに倣ったローコストオペレーションではなく、日本発の事業モデルの確立で、新たな可能性を見出したい。

客数増加の施策を再強化
——前期にスタートした中期3ヵ年計画の進捗状況を教えてください。
寺西社長 まずは経常利益率3%を目標に収益改善に取り組んでいる。安易に荒利益率を追求すると縮小均衡となるので、客数増加に向けた施策を強化している。売上にかかる数値をカテゴリーで分解し、シェアの向上を念頭に、客数を増やす様々なアプローチをおこなっている。
——取り組みの具体的な内容は。
寺西社長 約3年前に在庫効率の改善を目的に売場の容積率を下げ、結果的に売上高が低下した。これを反省し再度ゴンドラ本数を増やし、容積率の向上に努めている。増やした容積には、食品や衣料品などの戦略カテゴリーも充実している。戦略カテゴリーで客数や来店頻度を高め、買上点数、売上高を増やしていくストーリーだ。
——HBCのPB開発を強化していると聞きました。
寺西社長 「未病を形にする」というコンセプトでPBを開発しているが、未病に対する顧客の認知度はまだ高くない。開発力と同時に接客力も高め、専門性をアピールしていく。ただ、専門性の追求は確かに大事だが、そこに固執しないようにしたい。商品やサービスの内容に、ある程度の振り幅、遊びを持たせることが重要である。
日刊ドラッグストア2015年7月22日号より抜粋