
森永乳業は今春、カップアイスの主力ブランド「MOW(モウ)」を全面リニューアルした。「ネクストプレミアム」をコンセプトに、従来のミルク感の打ち出しから、大きく転換した。4月の発売後、売上高は大幅アップで推移している。原料など商品設計の細部にまでこだわった本格志向で、値ごろ感と両立する新しいプレミアムの形を提案した。「アイスクリームはコモディティ商品化している側面はあるものの、マーケティングの取り組み方でブランドの拡大ができるカテゴリーと実感した」(庄野郁執行役員冷菓事業部長)という。

「モウ」は03年の発売で、今期13年目を迎えた。これまで、「濃厚ミルクバニラ」や「ミルクいちご」、「ミルクチョコ」などミルク感を訴求し、独自の地位を構築していた。今春、通年商品を「バニラ」、「抹茶」、「生チョコ仕立て」(いずれも容量140ml、本体130円)の3品体制とし、味わいの打ち出しを変更した。カップアイスの中で、「モウ」のポジショニングをさらに高めるため、全面リニューアルすることとした。
「バニラ」は北海道産の乳原料とマダガスカル産の天然バニラ香料を使用し、コクのある濃厚な味わいとバニラの芳醇な香りを出した。「抹茶」は京都の老舗茶屋「丸久小山園」の宇治抹茶を使用し、抹茶本来の旨みと渋みを活かした。「生チョコ仕立て」は、エクアドル産のカカオマスを使い、濃厚で香り高いカカオの風味を打ち出した。原料の細部にまでこだわり、発売後、好調に推移している。
庄野執行役員冷菓事業部長は、全面リニューアルの経緯について次のように語った。
「発売10年を超え、これまでさまざまなことにチャレンジしたもののなかなか定番商品として定着せず、やや苦戦気味だった。カップアイスの中でのポジショニングを高めるため、改めてモウの方向性を議論した。コモディティ商品のくくりではなく、本当においしいものを日常的に提案する新しいプレミアムのあり方を目指した。この価格でこれだけの味わいと生活者に感じてもらえる究極のバランスを目指した。
さまざまな調査で、ミルク感はモウの優位性の上位に挙げられ、継続した方がよいという意見もあったが、大きく方向転換することを選択した。これまでの延長線上での変化ではお客さまに変わったことが届かないと思った。どれだけ驚きを感じてもらえるかを起点に商品を設計した。
結果として4―5月は売上が大きく伸長し、よいスタートをきることができた。販売が長くなればなるほど、小手先の変化で対応する傾向になり、モウもこれまで、小さな改良やデザイン変更にとどまっていた部分もあったと反省した。アイスクリームはコモディティ商品化している側面はあるものの、マーケティングの取り組み方でブランド価値の向上が可能なカテゴリーと実感した」
通年商品3品に加え、季節商品を展開する。13日、夏季限定で「ホワイトミント」を発売した。ミントは嗜好性の高いフレーバーだが、ナチュラル感を重視するブランドとして、着色料を不使用でアイスは白に仕上げ、これまでのミント味のカップアイスにない新しい価値を出した。
週刊流通ジャーナル2015年7月13日号より抜粋