ニチレイフーズの業務用事業部は、技術・製法の革新でおいしさを追求する。13年度の事業部制への移行後、価値向上に取り組んでいる。13年度、レンジアップ後もサクサクとした食感を維持する新技術の「衣革命」を開発し、今秋は技術革新で春巻をレベルアップした。「一時の価格志向一辺倒の状況から価値競争にシフトしている。ただ、マンアワー不足が大きな影響を与えており、ますます冷凍食品の重要性が増してくる。あらゆるレベルでバリューアップを追求し、取引先の収益改善に寄与する」(福本雅志執行役員業務用事業部長)としている。

味わいや品質、使用する素材・食材、陳列時のVMD、オペレーションの効率化など、あらゆる方向性で価値アップを追求する。13年、レンジアップ後に揚げたての食感を維持する新製法を開発し、クリームコロッケやメンチカツを商品化した。14年春は揚げ物でパン粉の剣立ちにこだわり、売場でのシズル感を高めたコロッケやメンチカツを投入した。
15年秋は「パリッと春巻」を投入し、春巻をレベルアップした。調理後に時間が経過してもパリパリとした食感を失うことなく、手づくりのようなボリューム感を出した。大きな具材がとろっとした餡に包まれている。中核商品の「本格中華 具材極だつパリッと春巻」、「贅沢中華 海鮮極だつパリッと春巻」、「同 肉極だつパリッと春巻」の3品を開発した。
自社製造する皮は時間経過への耐性を高め、パリッとした食感の維持とつややかな見栄えを実現した。皮と皮の層の間に空気を含ませる新製法で、ふっくらとした形状に仕上げる。
「春巻はコンビニエンスストアで取り扱いが拡大するなど成長カテゴリーで、15年度は100億円を突破すると見込まれている。その中で当社は約5割でトップシェアを確保している。№1メーカーとしてさらなる市場拡大に向け牽引する。
パリパリとした皮の食感維持と具材の食感アップが春巻の普遍的なニーズで、3年をかけて新技術を開発した。圧倒的に差別化された春巻を提案する」(福本執行役員)
このほか、主力シリーズのラインアップを強化する。惣菜向け「彩りおかず」で野菜にフォーカスした「ベジデリカ」は好調に推移するつまみ揚げのラインアップ強化で、「3種の根菜のつまみ揚げ」を発売する。さまざまな調査で惣菜への期待は、野菜摂取と栄養バランスがよいことが上位にランクされることに着目したもので、健康感と売場での華やかさを提案する。

選択できる品揃えで対応
SMでイートインコーナーの設置やここでの食事を想定したメニュー開発が検討されていることなど、福本執行役員は業務用マーケットの様相が変化していると指摘する。
「外食が回復し、上質商品のニーズが高まってきたことで14年冬、既存の上質商品を整理し直すとともに、『こだわりのおいしさ』シリーズを追加し、高付加価値型商品群を『スペシャリテ』として再編した。このとき、外食をターゲットに開発したこだわりのクリームコロッケはSMでも採用が進んだ。業態を絞り込むことなく、ニーズやシーンにあわせて選択してもらうことが重要な要素になると改めて感じた。
直近はメニューなどで、同業他社にとどまらず、広く食に関するあらゆる業種・業態を研究する傾向が強くなっている。SMでイートインコーナーの設置が広がる一方、外食では持ち帰りサービスを拡充している。ニチレイフーズとして、これまで惣菜向けは経時変化への耐性、外食向けは調理後すぐの味わいを重視し、商品開発してきた。今後はこれらを組み合わせた提案が求められるようになるかもしれない。柔軟にニーズに対応する体制を構築する」(同執行役員)
円安による原材料の高騰が進み、13年6月、14年7月、今年3月に価格改定を要請した時、バラエティ豊富な品揃えで取引先の要望に柔軟に対応したという。一例で、春巻は全22アイテムをラインアップしており、価格対応から価値アップ、上質までさまざまな組み合わせを提案した。
週刊流通ジャーナル2015年7月13日号より抜粋