
全国農業協同組合連合会(JA全農、成清一臣理事長)は国産の農畜産物の消費拡大に向け、店舗事業でSMと農産物直売所を一体化した新業態「JAファーマーズ」を展開している。6月12日にオープンした野田宿店(群馬県北群馬郡)は関東1号店で、青果は370名の地域の生産者を組織化し、精肉は各畜種で群馬県産を中心に構成した。また青果でカットフルーツや、精肉で焼肉商材、和のスイーツのどら焼きなど、各部門で集客につながる新たなカテゴリーづくりにチャレンジしている。

JA全農の店舗(Aコープ)事業は市町村単位の農協や、県もしくはエリア単位の事業会社が運営している。Aコープは青果と精肉は国産優先・地産地消を基本とする。国産農畜産物のいっそうの消費拡大を目指し、SMと農産物直売所を融合した新タイプのJAファーマーズを開発した。直売所100坪以上を含む売場面積500坪以上を想定している。1号店は14年10月、エーコープ近畿がららぽーと和泉店(大阪府和泉市)を開設した。17年度までの3年間で全国10店を目標としている。
野田宿店は2店目で、事業会社のエーコープ関東が開設した。エーコープ関東は神奈川(13店)・東京(1店)・埼玉(1店)・群馬(15店)に計30店を展開しており、14年度の売上高は259億6900万円だった。
同店はJR上越線・八木原駅から東へ2.5㎞の幹線道路沿いに位置する。売場面積632坪で、このうち農産物直売所を130坪で展開する。各部門で地域商材の充実に取り組んだほか、新しいカテゴリー・コア商材の開発・育成や、ワインとナチュラルチーズのコーナーなど新しい売場づくりに取り組んだ。
一倉亘店長は、店づくりの方向性について次のように語った。
「各部門で地域商材を充実し、地域密着型SMを打ち出す。130坪の直売コーナーはららぽーと和泉店より広く、生産者との連携を含めて、1年を通し幅広い商材を安定調達できる仕組みづくりに取り組む。さらに青果で店内加工のカットフルーツ、精肉で焼肉商材コーナー、手づくりのどら焼きなど、部門ごとに新しい取り組みにチャレンジし、店づくりの進化を図った」

青果は農産物直売所を主体とし、直営は品揃えを補完する機能にとどめる。また鮮魚とインストアベーカリーにコンセを導入した。取扱品目数は9300アイテムで、このうち農産物直売所は120アイテムとなっている。
直売所はJA北群渋川やJA赤城たちばな、JA前橋市などグループの調達力を活かし、370名の生産者を組織化した。商品は基本的に生産者が値付けして陳列する。青果のほか、ワインやジャム、豆腐、味噌、梅干などの加工食品や生花、雑貨なども揃えた。「生産者の作付け計画をまとめ、端境期などは直営でカバーするように年間計画を作成した。生産者は地区ごとに責任者を選任し、主導的に納品してもらっている。開店2カ月で、野菜の売上構成比は直売コーナーと直営で5対1となっており、順調に推移している」(一倉店長)
精肉は上州和牛や上州麦豚、赤城鶏など群馬県産の銘柄肉をコア商材に、すべての畜種を国産だけで構成し、地域商材の猪豚の冷凍肉や加工肉も品揃えした。たれ漬け肉やミートデリなどの簡便・即食型商品のほか、ハラミやミノ、センマイ、ハチノス、ホホ肉、テールなど、焼肉商材を専門店並みに品揃えし、差別化カテゴリーとして育成する。新たな取り組みとして、第2主通路の壁面でワインやナチュラルチーズ、生パスタ、チルドピザなどをコーナー展開した。

日刊流通ジャーナル2015年8月25日号より抜粋