
マツモトキヨシホールディングス(松本清雄社長)は今期の主要施策の1つに、訪日外国人の獲得を掲げている。免税対応店を急速に拡大させると同時に、前期末からMDや訴求方法、スタッフ育成を強化した外国人観光客特化型店の開設を始めている。このほど、東京・上野地域にオープンした特化型の3号店「マツモトキヨシ上野広小路店」を取材した。
マツモトキヨシHDは今期末までに、グループで200店舗を免税対応店とする計画を立てていた。その後、対応のスピードを上げた結果、6月30日時点で176店とグループの1割超になっている。これまで重点的に対応していた首都圏や関西圏に加え、繁華街や観光スポットの近隣、今後の訪日観光客の拡大が見込める地域にも広げている。スマホで希望の商品を指定できるよう、無料Wi-Fiの設置店も増やしてきた。
3月の「マツモトキヨシ有楽町イトシアプラザ店」(東京都千代田区)を皮切りに、外国人観光客特化型店の開設を開始した。6月11日に2号店「マツモトキヨシ銀座8丁目店」(東京都中央区)、6月27日に3号店「マツモトキヨシ上野広小路店」(東京都台東区)をオープンしている。
「上野広小路店」は、東京メトロ銀座線の上野広小路駅の交差点に位置し、徒歩1分程度の距離に買物スポットのアメヤ横丁(アメ横)、また道向かいに百貨店の松坂屋がある。桜の名所で美術館や博物館も多い上野公園や、電気街の秋葉原にも近い。
1階と2階の2フロアで、売場面積は約80坪となる。中国語を話せるスタッフを常時配置しており、いずれも中国人の留学生や、現地出身で東京に住む人で、中国語と日本語の両方に対応できる。研修を通じ、日本人と同レベルの接客能力を身に付けている。

蓄積した訪日客の購買情報を活用
1階はOTCや健康食品、衛生材、ドリンク剤、オーラルケアなど、外国人観光客の人気が高い商品と生活必需品を展開する。壁面には、訪日外国人に人気のビタミン剤や青汁、馬油、抹茶フレーバーの菓子、爪きりをコーナー展開する。土産用に適した5枚入りマスクは、高機能高密着タイプを含め、3尺のハンガーフック5段を使い、強くアピールしている。
有楽町イトシアプラザ店や銀座8丁目店にも共通する傾向として、PBのMKカスタマー商品の指名買いが増えており、中でも付加価値商品が人気である。例えば2006年に発売した「和サプリ」は、五穀米や青魚、黒豆など、成分自体ではなく素材を切り口にしたサプリだが、日本食の健康的なイメージが受けている。またナットウキナーゼのように、日本以外のメーカーが製造していない成分も人気で、PB・NBを含めて数品目陳列している。
「当社はインバウンドが注目される前の2007年から銀聯カードを導入し、中華圏観光客の購買情報を持っている点が強みだ。人気カテゴリーの中でも、売れ筋の商品をしっかり確保できている。こうした評判が口コミとなり、来店やMKカスタマーの指名買いにつながる好循環を産んでいる」(西尾裕一店長)
おむつなどの日用品をカットする一方で、オーラルケアや衛生材などの必需品を充実した。OTCについても薬剤師を配置し、要指導医薬品や第1類医薬品も販売する。
西尾店長は「外国人観光客は現時点で多くて5割程度となる。特化型1号店の有楽町イトシアプラザ店は、道向かいに既存の有楽町二丁目店があり、日本人客と外国人客が使い分けされている。これに対し上野広小路店は周辺に当社の店舗はないが、売場面積が大きいため、足元顧客も満足できる品揃えを心がけた」(西尾店長)

日刊ドラッグストア2015年8月27日号より抜粋