
良品計画(松﨑曉社長)は4日、旗艦店の有楽町店(東京都千代田区)をリニューアルオープンした。商品や売場を通じて暮らしのあり方を見つめ直してもらう手法として、2万冊の書籍を導入した。新刊重視ではなく、ライフスタイルのヒントとなるような書籍をセレクトしている。また、住居関連のフロアは、住宅のリノベーションを主要テーマに構成する。既存の住空間を見直すことをきっかけに、インテリアのトータル提案につなげる。

同社は、早ければ今期にも営業収益が3000億円に到達する。1980年に西友の事業部としてスタートし、分社化を経て1000億円に到達したのは99年だった。2000億円を突破したのは13年であり、3000億円に向け成長スピードを加速させてきた。
企画室長兼経理財務担当、情報システム担当管掌の武内健治執行役員は、成長の要因について次のように語っている。
「商品力の向上や出店の拡大だけではない。背景には、店舗やネットを通じ、暮らしについて学び・聴き・語るなど、コミュニケーションを続けてきたことがある。暮らしと向き合いながら、自社商品を深めてきたことが成果につながっている」
世界最大の旗艦店と位置づける有楽町店の改装では、暮らしのあり方を考える新たな手法として書籍にフォーカスした。同社が取り扱う各カテゴリーと関連する書籍を合計2万冊揃える。書籍の展開エリアは3フロアすべてに設けた。
書籍の選定は編集工学研究所が監修し、各カテゴリーに近い位置に関連書籍を配置する。子供やインテリア、食関連などは商品カテゴリーと書籍のテーマが明確にリンクしている。服飾関連と隣接する書籍には著名人の伝記なども含み、広くライフスタイルを扱う内容となっている。
武内執行役員は、「新刊を追いかけるのではなく、商品カテゴリーと関連する価値ある本、ライフスタイルを考えるうえで参考になる本をセレクトする。本の情報には、商品展示では伝えきれない生活のヒントがある。単純な売上ではなく、暮らしを見つめ直すきっかけを提供できるといい」としている。

住宅リノベーションの需要開拓
有楽町店は売場面積992坪の3フロア構成で、売場面積は改装前とほとんど変わらない。書籍売場を複数導入したが、取扱商品は同社のフルラインで構成する。ただ、2階に設置していたモデルハウスは撤去した。これはハウス事業の重点を「無印良品の家」として販売している新築戸建から、既存住宅のリノベーションへとシフトさせる戦略的なねらいによる。
3階の住関連フロアは、住空間を見直すヒントをテーマに商品展示を充実させている。フロアの一角にはリノベーション事業の柱となるサービス機能「インフィルゼロ」と「インフィルプラス」の相談カウンターを設置する。
インフィルゼロは、既存の建物を躯体だけのスケルトン状態に戻すことで、水回りを含め住空間をゼロから設計し直すサービスだ。ハウス事業の子会社MUJI HOUSEが担当する。施行対象を東京23区の集合住宅に限定する。
また、インフィルプラスは壁や床、キッチンなど住空間のリフォームを主眼としたサービスだ。無印良品の商品を軸に、施行を含め住空間のトータル提案を行う。インフィルゼロとプラスの組み合わせにより、住宅リノベーション需要の掘り起こしを目指す。

日刊流通ジャーナル2015年9月8日号より