



RTDユーザーの裾野は広がり、女性や若年層に限らず男性30~40代の飲用機会も増えている。ビール類との併飲が一般的になりつつあり、食中酒として食卓出現率が高まっている。
飲用頻度の高いユーザーが増加する一方、RTDには酒類の入門カテゴリーという以前から変わらない役割もある。初めて飲んだ酒類としてRTDを挙げるユーザーは約6割で、ビール類の2割を大きく上回る。
サントリースピリッツのRTD戦略は、食中酒として飲用頻度が増えているユーザーと、エントリーユーザーの二極に対応している。食中酒ニーズには「-196℃ストロングゼロ」や「こくしぼり」、「角ハイボール缶」を揃え、エントリー層はアルコール分3%の「ほろよい」で取り込んでいる。
食中シーンに対応したブランドのうち、「-196℃ストロングゼロ」は7月累計で14%増、「角ハイボール缶」は17%増と好調に推移している。2月に発売した「こくしぼり」は、今年の計画を150万ケースから250万ケースに引き上げた。また「ほろよい」は、7月単月で15%増と復調し、累計では前年並みとしている。
6缶パックの普及めざす

「-196℃ストロングゼロ」は、発売初年の09年が602万ケースで、14年には2306万ケースに拡大した。高アルコールの経済性とプリン体ゼロ・糖類ゼロの機能性を基本価値とし、食事に合う味覚設計や、〈DRY〉などフレーバーの広がりによって市場の成長を牽引してきた。今年も前述のように2ケタ増で推移しており、年初の目標を引き上げ2600万ケース(13%増)到達を目指す。
好調の要因は昨年12月、主力フレーバーの〈ダブルレモン〉をアルコール分8%から9%に引き上げたことだ。
RTD・リキュール・焼酎部の二ノ宮治之課長は、「アルコール分を1%引き上げると味わいに大きく影響する。アルコールに負けないようレモンフレーバーのボリューム感も高め、全体として食事に合うさっぱりとした味わいにまとめる必要がある。当初はレモンだけ9%にする予定だったが、反響が予想以上であったため、〈ダブルグレープフルーツ〉、〈DRY〉にも広げることになった」としている。
〈ダブルグレープフルーツ〉のリニューアルは6月に実施し、9月末には〈DRY〉の9%商品が全国展開となる。
「ブランド全体を9%に統一する考えではなく、それぞれ入念に味わいづくりに取り組んだ結果、販売時期がずれることになった。とくに〈DRY〉は、この味じゃなければいけないというお客さまが多い商品だ。原料酒等のバランスを見直し、飲み応えもキレもアップさせることにこだわった」(二ノ宮課長)
通年品の主力3アイテムが9%となる9月末から、「999(トリプルナイン)」キャンペーンを展開する。6缶1口で応募すると、抽選で国産黒毛和牛900g、現金9000円、ストロングゼロ9缶セットのいずれかが当たる。同キャンペーンを機に〈レモン〉〈DRY〉に続いて〈グレープフルーツ〉の6缶パックを通年品として販売し、まとめ買い需要への対応を強化する。
二ノ宮課長は、「ビールと同じ食中シーンに登場し、飲用頻度も上がっている。酒量販店ではケース販売も伸びている。6缶パックの需要は大きいはずだが、RTDの売場には浸透していない。999キャンペーンをきっかけに、RTDの6缶パック展開を広げたい」と語る。
通年品で食中シーンの開拓を進める一方、限定品ではフルーツ系フレーバーを商品化し、バラエティを求めるユーザーに対応する。夏季の〈冷凍みかん〉や、このほど発売した〈葡萄ダブル〉は、通年品とのアソート6缶パックも発売している。
また、夏期に東京・大阪で展開した「チューハイガーデン」では、たっぷりの氷で飲むスタイルを提案した。「高アルコールチューハイならではの飲み方で、食事との相性もより実感いただける。飲用スタイルのバラエティも広げたい」(二ノ宮課長)
週刊流通ジャーナル2015年9月7日号より抜粋