
地域包括ケアのモデル地域で患者ニーズに対応した調剤を
スギホールディングス(桝田直社長)の子会社のスギ薬局(榊原栄一社長)は8月13日、「スギ薬局柏豊四季店」(千葉県柏市)を開設した。地域包括ケアシステムのモデルケースの柏市豊四季地区で、医師や看護師、介護士などとの多職種連携を実現し、個々の患者のニーズに応じた在宅調剤をおこなっている。地域医療対応型ドラッグストアを展開する同社は、団塊世代が後期高齢者に突入する2025年を目標に、柏豊四季店をはじめとする在宅の取り組みを水平展開していく考えである。
スギ薬局は調剤併設ドラッグストアを拠点に、地域医療への対応を強化している。7月末時点の在宅患者数は8000人超で、今期末の16年2月には在宅実施店舗が300店に達する見込みである。
柏豊四季店は同社の在宅実施店の中でも、多職種連携の取り組みが特に進んでいる。豊四季台団地は現在約6000人が居住するが、1960~70年代に移り住んだ住民が中心で、65歳以上の比率が41%、75歳以上は18%と、いずれも全国平均の2倍以上となっている。
柏市は2009年、東京大学や独立行政法人UR都市機構とともに研究会を発足した。都市部の高齢化対策の試金石として、国が構築を目指す地域包括ケアシステムのモデルケースとなっている。
同社は2013年、豊四季地区の地域医療に対応するため、調剤専門薬局のスギ薬局柏店を開設した。8月13日にオープンした柏豊四季店は、その柏店をリビルドし、幹線道路沿いに移転すると同時に物販を開始している。
300坪・調剤併設の標準型で、商圏は約1㎞の5000世帯を想定する。オープンから3週間が経過し、想定よりも高齢者客の比率が高いことから、今後客層に合うMDに変えていく。地域の健康情報拠点を目指しており、入口近くに誰でも気軽に立ち寄って歓談できるコミュニティスペースを設けた。高齢者や妊娠期の母親向けのセミナーや健康測定会なども、このスペースを使い積極的に実施していく。

Drug.S開設で商品の提供が円滑に
調剤室はクリーンルーム(調剤無菌室)を備え、麻薬や抗がん剤の調剤、TPN輸液の調製をおこなう。高齢化が進む柏市内には、クリーンベンチ(装置)を持つ薬局が数件あるが、ルームを保有する薬局は少ない。
薬剤師は5人で、全員が外来に加えて在宅調剤を担当している。統括する餅原弘樹氏は、外来がん治療認定薬剤師と緩和薬物療法認定薬剤師の資格を持つ、院外では数少ない薬剤師で、病院や介護関係者との協議など、対外的な役割も担う。
開店時間は午前10時だが、薬剤師は医療機関からの連絡が来る9時前に出勤する。申し送り事項などの確認後に、医師の往診に同行して薬の提案や残薬のチェックなどをおこなう。
餅原氏は「患者の症状や飲み込み動作などに応じ、剤型の選択や服用をアドバイスする。医師の往診への同行は、薬剤師に点数が付かず無償だが、医師や看護師、患者家族の負担軽減に貢献しており、薬剤師の価値向上につながっている」と語る。
午後は在宅の患者を訪問し、調剤した医薬品や日用品等を届ける。商品の注文は、患者本人のほか、ヘルパーや看護師からも受ける。トイレットペーパーや大人用紙おむつなどの在庫量が多く、スムーズな提供を実現している。価格も店頭と同じである。
夕方に訪問から戻った後も、医師からの処方変更など、当日中に必要な対応で、再び患者宅を訪問する。夜は看護師への連絡やスタッフなどに申し送りをし、患者に対し切れ目のない支援をおこなう。
担当薬剤師の携帯電話を通じ、閉店後も24時間対応で連絡をとれる。問い合わせだけのケースも多いが、患者に激しい痛みが発生した場合は、夜でも薬局を開け、クリーンルームで麻薬を調剤することもある。
日刊ドラッグストア2015年9月10日号より抜粋