
イオンリテール(岡崎双一社長)は、18日にリニューアルオープンしたイオンスタイル湘南茅ヶ崎(神奈川県茅ヶ崎市)に、衣料・生活雑貨の専門店「FT」(エフティ)の2号店を開設した。従来の衣料部門に変わる売場として、衣料・雑貨をスタイル別に編集する。40代女性とそのファミリーをターゲットに、カフェや子供が遊べるスペースを併設し、くつろげる空間づくりを目指す。食品フロアを含め30〜40代ファミリーの取り込みを強化し、500mの距離にある自社店舗の茅ヶ崎中央店とのすみ分けを図る。

FTの1号店は13年11月オープンの吉川美南店(埼玉県吉川市)で、駅近くにフリースタンディングで出店した。GMSの2階に出店した2号店は、商業施設内のモデルケースと位置づける。売場面積は1号店の1.4倍となり、カフェやネイルサロン、子供が絵本やお絵かきを楽しめる「こどもラウンジ」といったスペースを設けている。
主要ターゲットを40代女性に設定するのには戦略的なねらいがある。FT事業部の木下尚久事業部長は、「団塊ジュニアである40代は、これから消費の最大ボリュームになっていく。5年後、10年後を見据え、ターゲットと共に成長していく。吉川美南店の客層は、ねらいより少し若く、最も多いのが30代後半、次いで40代前半となっている」という。1号店は、MDの修正を続けることで売上を伸ばしている。今年3月以降は前年比2割増のペースで推移している。
2号店の売場は、物販スペースのゾーニングを変更した。レディス、メンズ、キッズ、ライフグッズといった大枠のもと、ファッションのテイスト別に衣服・雑貨を融合した編集となっている。アメカジやナチュラル、トラッド、ユーロなど、好みのスタイル別に衣料と雑貨を1カ所で選べるようにした。
「1号店の準備期間は1年ほどしかなく、売場はGMSの分類を踏襲したものにとどまっていた。それから2年近くをかけて顧客ニーズをとらまえながらMDを変え、アパレルと服飾雑貨、生活雑貨に横串をかけられるようになってきた。家族で来店し、くつろいで過ごせる空間を目指す。売りたい、売りたいを前面に出しても、今のお客さまは拒否反応を示される。ゆっくりとくつろぎながら、気に入った商品を見つけていただけるようにする」(木下部長)

GMS自社競合商圏の差別化オプション
1号店から2号店までの間に、新たな仕入先は60社以上増えた。ほとんどが中小メーカーで、従来のMDにはないクリエイティブな感性を重視している。
「1品単価をどうするといった考え方はしていない。お客さまがどんなものを欲しがるか、それだけ考えてセレクトしている。ただ、GMSの衣料・雑貨と比べ大きく変わることはないと思う。約1万6000アイテムのうち、6割以上を雑貨が占め、残りが衣料となる。幅広いゾーンに分かれた売場を集中レジで一括で取り扱う仕組みなので、買上点数は伸ばしたい。客単価は5000円くらいを目指す」(同部長)
今後の出店は、2号店の検証を踏まえて決定する。専門店化を進めるGMS改革の一環ではあるが、衣料売場を全てスイッチするための業態ではない。商圏特性を踏まえるほか、茅ヶ崎市のように近隣の自社店舗との差別化オプションとして検討する。
木下部長は、「認知を上げるためにも物流効率の点からも、当面は関東エリアでのドミナント形成を目指したい」としている。


日刊流通ジャーナル2015年9月30日号より抜粋