
イトーヨーカ堂(戸井和久社長)は9月25日、東京都新宿に食品館新宿富久店を開設した。店舗面積592坪で都心型フォーマットとして、最大規模となった。SMで広がっているイートインスペースとは一線を画すカフェコーナーを導入したほか、生鮮は食品館最大規模で、それぞれ対面コーナーを導入し、鮮度、品揃えの豊富さを訴求する。同時に、ドライエイジングビーフコーナーの導入など、食のトレンドを反映させた。渡邊保弘食品館事業部長は「イトーヨーカ堂の食品よりも品揃えを広げ、SMとして進化させた」という。
食品強化など足元商圏の来店頻度アップが課題に
食品館新宿富久店は東京メトロ丸ノ内線・新宿御苑駅から徒歩5分、都営新宿線・新宿三丁目駅から徒歩8分の至便な立地にある。「富久クロス」敷地内ペントテラス1階部分に出店したもので、食品館のほか、ベーカリー、焼鳥、持ち帰り弁当、セブン美のガーデン、調剤薬局などのテナントを導入した。新宿区への出店はイトーヨーカ堂として、初めてとなった。施設全体の店舗面積は862坪である。食品館は592坪で、このうちカフェコーナーが30坪強を占める。
店舗の最終導線に惣菜と連動する形で展開する「富久カフェ」は51席のスペースを確保した。コーヒー・紅茶と店内で熟成・焼成するピザを注文できるほか、惣菜・弁当をはじめ店内で購入したものをすべて飲食できる。一般的なイートインスペースと異なり、専任のスタッフを配置して、グラス・皿を貸し出し、レストランのイメージで、くつろいで飲食できる。近く、アルコール類の提供を始める。高感度なイートインスペースでアルコール類を提供するのは、米国の高級SMでは一般的だ。
「SMのあり方を研究し、レストランの要素を取り入れた。カフェ効果で、サンドイッチ、弁当、デリカが動くだけでなく、既存のイートインにはない、滞在、くつろぎの空間を提供する」(渡邊部長)

生鮮3部門で対面要素を導入
生鮮は青果のカットフルーツ、精肉のオーダーカット、鮮魚の調理加工サービスと、すべて対面要素を取り入れた。「事前調査でオーガニックのニーズが高かったことから、青果で有機野菜をコーナー展開したほか、加工品でも100品目を揃えた。精肉は外食で流行しているドライエイジングビーフをコーナー展開している。おいしさへの挑戦で、常設する。熟成牛は取り扱いが難しいが、対面で接客しながら、焼き方などの情報を発信していく。鮮魚は周辺に、丸魚をリーズナブルな価格で売っているところが少ない。18尺のスペースで、常時30の近海魚を取り扱う」(中村純食品館事業部チーフマーチャンダイザー)
青果はナチュラルライフの名称で自然派の食料としてピーマン、トマト、ニンジンなどの有機野菜のほか、有機ドレッシング、オーガニックのレトルト食品のカレー、クリームシチューなどをひとつにくくった。トマトはバラ売りは行わないが、複数の品種を揃えたカラフルトマト、高糖度トマトをコーナー化した。季節感のアピールで5000円、1万円、2万円の価格で、国産のマツタケを揃えた。また通路内に平台を配置し、モヤシ、ミックスモヤシなどの袋野菜と中華惣菜の素、シーズニング各種を組み合わせ販売している。日配品の一角で販売する卵は6個パックのほか、こだわり品を1個、2個で少量販売している。
精肉は奥州こくみ鶏、こくみ豚、黒豚、松阪牛の銘柄肉を核に品揃えする。ドライエイジングビーフは青森産、岩手黒毛和牛の2種を商品化している。オープンケースでは、イベリコ豚、生ハンバーグ、オーガニックビーフ、リアルオーガニック卵など、新しい食を提案している。

日刊流通ジャーナル2015年10月8日号より