
イオンリテール(岡崎双一社長)が21日にオープンしたイオンスタイル板橋前野町(東京都板橋区)は、30〜40代とその親世代が多い商圏で、物販・サービス機能を子育て世帯のライフスタイルに沿った内容に特化した。中心となる食シーンでは、内食に関わる取り組みに加え、フードコートで食べて帰るシーンづくりに力を入れる。1階中央のフードコートは、351席を囲んで対面形式のショップを配置する。その多くが直営によるもので、ビュッフェ形式のデリ、卵料理、クレープ、ピザ、ベーカリー、焼き野菜、ジュース、イタリアのカフェメニューといった専門店を展開する。
子育て世帯にターゲットを絞り込む

同店は都営三田線・志村坂上駅から徒歩10分の住宅街に位置する。イズミヤの居抜きで出店したもので、建物は残したものの、地下1階から3階までの各フロアは配管を含め全面的に改めた。車5分圏に2万世帯・4万人が居住し、イオンリテールのGMSでは屈指の高密度商圏という。
住民は団塊世代とそのジュニア世代の比率が高く、その点はモール型SCがターゲットとする従来の商圏モデルと大差はない。ただ、30~40代は過去5年で1万人以上増加しており、商圏調査によると子育てに高い関心を持つ生活者が多いことが分かった。また、周辺にはワンストップショッピングを提供する大型店がなく、家族が楽しみやすい飲食店も少ない。こうした特性を踏まえ、板橋前野町店のターゲットを子育て世帯に絞り込んだ。
石井教裕店長は、「5カ月かけて『子育てをするオトナを応援する』というコンセプトにたどり着いた。その中でも子育て中のママを主要ターゲットに設定する。子供や家族、ママ友など、さまざまな人たちとのシーンを楽しめる商業施設を目指した。このコンセプトのもと、時間消費とショートタイムショッピングの両面を強化している」という。
売場面積は4フロア合計で2622坪で、各フロアは最大でも800坪前後となっている。地下1階は内食対応をメインとした食品フロアで、1階は351席のフードコートを中心とした即食対応や、酒類やイタリアン関連、花といった専門店のフロアとなっている。2階はHBCと住居、3階は遊戯スペースを含む子供のフロアとなっている。紳士・婦人衣料は、インナー以外はカットした。その理由について岡崎社長は、限られたスペースにおける選択と集中の結果と説明する。
「狭い売場に合わせて全ての商品を入れようとすると、よく言われるように何でもあるけど欲しいものはない、魅力に欠けたGMSになってしまう。イオンスタイルが目指すのは、そういった従来型のGMSではない。セグメントされた専門売場の集積であり、その中身はマーケットに合わせて変化する。社内では各専門売場をユニットと呼んでいる。ユニットにはある程度の規模が必要で、それをはめ込んでいった結果、衣料品がはみ出すことになった。転勤などで人口の流出入が多いので、住関連は確保している」

地元生鮮で足元を深堀り
内食に対応する地下1階は、子育て中の女性にアピールするポイントとして、安全・安心や環境配慮を強く打ち出す。
農産は、導入部にオイシックスの野菜や常時30アイテムほどのオーガニック野菜をコーナー化した。グループ直営農場の野菜コーナーも設けている。オーガニック野菜に関連し、青果の主通路では「トップバリュグリーンアイ」のオーガニックシリーズを展開する。
鮮魚は、サステナビリティの切り口でMSCやASC認証の常設コーナー「フィッシュバトン」を導入した。コーナー名には次世代に水産資源を受け渡すという意味を込めている。オープン日はサーモンや、クリスマス商材のひとつであるロブスターを中心に品揃えしていた。
畜産ではトップバリュのタスマニアビーフ専用コーナー「オーガスト74」を導入した。もともと環境配慮のグリーンアイとして展開していたが、成長ホルモン剤や抗生物質、遺伝子組み換え飼料を使わずに育てた安心感と、赤身を中心としたヘルシー感を訴求する。スネかたまりやテール、ローストビーフ用のモモかたまりなど、さまざまな部位を扱う専門性も特徴だ。
南関東カンパニー支社長の大島学取締役専務執行役員は、食品2フロアのMDについて次のように語っている。
「子育ての意識が高いお客さまは、子供に何を、どんな環境で食べさせるかに強いこだわりを持つ。そうしたお客さま向けに、1階のラ・フォリアは心地いい環境で即食ニーズに対応する。地下1階は、家庭の食卓をサポートする内容を充実させただけでなく、選ぶ楽しさも強化している。同規模店の加工食品は5500SKUが標準だが、什器を高くし、密度感のある陳列で7000SKU以上を扱う」


日刊流通ジャーナル2015年11月26日号より抜粋