
商勢圏の最南端、若い世帯向けに洋風MDを強化
ヨークベニマル(真船幸夫社長)は11月27日、自社開発のNSCの核店舗として売場面積807坪の守谷店(茨城県守谷市)を開設した。つくばエクスプレス・守谷駅から徒歩10分に位置し、同社の店舗では最南端に位置する。ドミナント戦略を進めるうえで、埼玉・千葉にも遠くないエリアだが、大高善興会長は既存の5県からさらに広げる考えはないという。「首都圏では当社のフォーマットに必要な条件が揃わない。フォーマットを変える必要がある出店はしない」(大高会長)

大高会長は、出店の範囲は本社を置く福島県郡山市から半径500km内が目安という。「郡山を拠点に、物流が効率的に動く範囲がそれくらいだ。教育などのために本部に集まっても、その日のうちに帰れる距離でもある。SMは出店することで経営効率が上がらなければならない。それができないほどエリアを広げることはない」(同会長)
距離の問題以外にも、東北と関東ではマーケットが異なるため、既存のフォーマットをそのままでは活用できないと指摘する。「茨城くらいまでなら、土地の値段、ライフスタイル、賃金は南東北とそんなに大差ない。当社のコンセプト、フォーマットが通じる。しかし、千葉や埼玉では違ってくる。坪あたりの家賃や効率、収益構造を変える必要がある。つまりフォーマットを変える必要がある。フォーマットの違いは、グループのヨークマートを見ていても思う。我々は既存エリアでドミナンスを築きながら、自分たちのフォーマットを進化させていく」(同)
30〜40代家族がターゲット
新店の最寄駅であるつくばエクスプレス・守谷駅は、東京・秋葉原まで約40分でアクセスできる。都心への通勤圏であり、人口の増加が続いている。商圏1km内には約3000世帯・7700人が居住し、30〜40代の構成比が高い。店舗の周囲は現在、マンションや戸建が建設中である。
同じ沿線で今年1月に開設した「つくば竹園店」(茨城県つくば市)の商圏は、30〜40代を中心とするなかでも単身世帯の多さに特徴があった。守谷店も1〜2人世帯の割合が6割近くを占めるが、世帯人数は平均2.5人となっており、子育て世帯の比率も高い。若い世帯をターゲットに、各部門が洋風の商品提案を充実させている。
青果の導入部は、従来のように地場野菜と地元の加工食品で構成するコーナーと、価格訴求の「やっちゃば」コーナーを配置する。さらに壁面にはつくば竹園店に続いて対面形式のカットフルーツ売場を設けた。また、メニュー提案コーナー「フレンドリーテーブル」を第2主通路に設置した。
若い家族世帯向けのMDとして、生鮮各部門は素材のよさだけでなく簡便商品を強化している。オードブル的な鮮魚の海鮮サラダセットや、冷凍肉でも高価格帯のローストビーフや牛タンを揃えるなど、簡便性の中でもこだわりのあるメニュー提案に取り組んでいた。また、生鮮部門それぞれのサラダ商材は、惣菜売場の「だんらんデリ」に隣接して展開する。

ライフフーズの惣菜は、洋風提案として壁面に手巻き寿司、寿司ロールのコーナーを設けた。そのほかファミリー需要を見越して7種類のフライ商品を100g・178円で量り売りする「フライドセブン」をコーナー化している。ベーカリーでは従来のドーナツに加え、マフィンなどの焼き菓子コーナーを導入した。
グローサリーの定番売場は、価格を打ち出した商品をカテゴリー横断で集めた「スペシャルプライス」と、嗜好品のカテゴリーでまとめた「ベストセレクト」の両極をコーナー化した。ベストセレクトは、大型什器を使ったコーヒー豆の詰め放題や、輸入菓子、ワイン、クラフト系ビールなどで構成する。輸入菓子ではザ・ガーデン自由が丘の売れ筋商品を展開する。
トクホやアレルゲン対応品など、最近の店舗で拡大している健康系の食品コーナーを導入し、野菜ジュースや栄養ドリンクなども取り扱う。
同店の競合には、2kmの距離にカスミのフードスクエアイオンタウン守谷店(茨城県守谷市)がある。曜日セールが浸透しているカスミに対し、ヨークベニマルも守谷店の店内では全店で行っている曜日セールのアピールを強化していた。また、ヨーグルトでは「毎日が安い」のPOPを掲げ、販促を強化する。同店は食品だけで9500SKUとし、品揃えを5%ほど増やした。年商は18億円と計画している。


日刊流通ジャーナル2015年12月2日号より抜粋