佐伯行彦社長インタビュー
さえきセルバホールディングスの佐伯行彦社長は、中小SMチェーンの革新に向け、食に関わるさまざまな業種の連携を構想する。ITをもとに情報と物流インフラを共有化し、店舗からの情報発信で必要な商品・サービスを提供するビジョンを描く。「異業種を含めて情報、知恵、経営資源を結集することで、全く新しい成長戦略が描ける。足りていないのは、SMが苦手とするITを活用することだ。しかし遅れている分だけ、新しいものを吸収する余地がある。一気に新しいものへジャンプできる」(佐伯社長)という。

――以下は佐伯社長の発言要旨である。
1995年のウインドウズ95の発売を分岐点に、世の中は全く新しいものに変わってきた。ITを我々のビジネスにどう活かすかを考えるうえで、既成概念が多いほど不利になる。現在も進行中の変化の中では、大手チェーンほど店舗数の多さ、規模の大きさがかえって足かせになる。まして、いま流通の変化をつくっているのはEコマースだ。このEコマースにおいては、売場の大きさは関係ない。
ITの活用においては、大手チェーンにも課題は多く、中小SMはなおさら弱い。しかし、ITにおいては遅れていることが不利とは限らない。むしろ先行したことで、返って既存の仕組みが重荷になるものだ。テレビの普及に例えれば、日本では白黒からカラーという順をたどったが、ベトナムではいきなりカラーテレビが普及した。遅れていても、一気に最新にジャンプすることができる。
ITを活かすことで、中小企業から新たな波を起こせる。今はそのチャンスだ。ITをさまざまな角度から駆使し、情報、知恵、経営資源の結集を進めたい。これら力の結集はSMの枠にとどまるのではなく、異業種を取り込んでいかねばならない。
店舗を拠点に総合生活提案
中小が生き残るためには、流通のグループさえ関係ない。今はグループ規模を競い合う時代ではない。同じ志のもとで商品と物流の仕組みを共有する。それによってニーズのあるところに必要な商品を届ける環境をつくる。日本人が豊かな生活をするために結集する。それが大義というものだ。卸とも連携して共通のプラットフォームを構築すれば、個店ごとに在庫を抱えることなくオムニチャネルを実現できる。
地域密着の中小SMは、そのエリアに根ざした情報コンテンツを豊富に持っている。そして高い頻度で来店していただけるリアル店舗は、強力な発信機能を持つ。なんといってもリアル店舗を持つことの信頼感は武器であり、バーチャルを組み合わせることで情報の発信機能はさらに高まる。リアルの信用にバーチャルを融合させることで、お客さまの生活を変えられる。
毎日、多くの来店客があり、しかも8割は女性だ。女性のライフスタイルに合った情報を、日常だけでなく非日常の領域も含めて提供できるはずだ。買物情報に縛られる必要はない。来店につながるような仕掛けをつくっていく。来期にはテストケースをやってみたい。
SMの概念に縛られることもない。ライフスタイル全般の中に、食品もあるという発想が必要だ。いわば総合生活提案がテーマだ。
日刊流通ジャーナル2015年12月18日号より抜粋