ユニ・チャーム(高原豪久社長)は国内の就労人口や出生率の低下による市場縮小に対し、商品の使用時期の早期化と使用機会の創出による数量増加、高付加価値化による単価アップに取り組んでいる。おむつや生理用品のトップメーカーとして、商品開発を通じて新しい価値を創出し、市場の拡大に取り組む。16年春は、背中からの軟便モレ防止ポケットをつけたベビー用おむつや、薄さと柔らかさを両立させたスリムナプキンを投入する。

ユニ・チャームは、ベビー用おむつや大人用おむつ、生理用品、ペットフード・用品の市場について、インバウンド需要を取り込んで今後も拡大を続けるとみている。ただ純粋な国内需要は、65歳未満の人口が減少しており、現状のままでは、ベビー用おむつや生理用品を中心に縮小すると予想している。こうした環境の変化に対応し、消費者の使用時期の早期化と使用機会の創出による数量増加と、高付加価値化による単価アップに取り組み、国内での成長につなげる。
使用の早期化の成功例として、男性用軽失禁パッド「ライフリー 男性用さわやかパッド」がある。40~50代の男性でも、前立腺肥大などの症状で、トイレで尿を全て排泄できず残尿でズボンを汚すことがある。以前はこうした少量の尿モレの対策品は少なく、ティッシュや女性用の軽失禁パッドなどでケアをする男性が多かった。「ライフリー 男性用さわやかパッド」を14年春に発売し、男性用軽失禁パッド市場は、2年間で5倍の9億円に拡大した。そのうちユニ・チャームはシェア75%を占めている。使用者は7万人から37万人に増え、さらに約100万人の潜在ニーズがあると推測している。
「ムーニー エアフィット 新生児用小さめ」は新しい使用機会の創出と早期化に寄与した。最近の乳児の出生体重は低下傾向にあり、半数が3000g未満とされる。このため従来の最小サイズだった新生児用よりも一回り小さく、産まれたての乳児の繊細な肌に対応した「新生児用小さめ」を開発した。販促資材を使った店頭でのアピールも奏功して、同社のSサイズ以下の売上高は20%増となった。
マスクは高付加価値化による単価アップにつながった。使用期間や1日あたりの装着時間が長くなっているため、シーズン前の9月から「超快適マスク」や「超立体マスク」などの1枚あたり50円以上の高機能品の展開を提案した。今年は残暑が短く風邪が流行したこともあり、9~10月のマスク市場は13%増に拡大したが、ユニ・チャームの売上高は市場を上回る30%増となった。
中野健之亮取締役専務執行役員は「他社からシェアを奪うゼロサムではなく、市場を拡大するプラスサム発想の開発・販売活動が国内マーケットの健全化や拡大につながる。生産者と消費者の双方が気付かなかった価値を発見し、高い技術で商品として需要を顕在化させることが重要だ。乳児からお年寄り、ペットに至るまで、生活者視点の発想で新たな価値を提案する」と語った。
販売店に対しては、紙製品の専業メーカーの幅広い品揃えを活用し、フルラインの展開を提案する。ベビー用おむつ売場では、お尻拭きや母乳パッド、トレーニングパンツ、生理用品市場はタンポンやパンティライナー、大人用おむつ売場は、お尻拭きや尿取りパッドといったサブカテゴリーと一体化した売場づくりを拡大する。
「生理用品をフルライン展開する店では、テレビCMと連動した什器を使ったタンポンの展開や、パンティライナーの香りが分るPOPが売上に寄与した。7~10月は生理用品市場が5%増だったところ、フルラインで導入した店の売上は8%増となった。前年割れしていたタンポンは3%増に転じたほか、ライナーは2ケタ成長となった。成功事例を分析し、他の店舗に紹介することでサブカテゴリーの一体的な展開を増やしたい」(中野取締役)
日刊ドラッグストア2015年12月15日号より抜粋