明治屋 米井元一社長インタビュー
明治屋(米井元一社長)は、百貨店内への出店で全国に商勢圏を広げている。15年は5月に鳥取県米子市、8月に京都市下京区に出店した。米井社長は、「百貨店のお客さまとの親和性は高く、地方にも当社のマーケットは存在する。出店を決める際は都心部も含め、明治屋らしい買物体験の提供を重視している」という。商品事業では、好調な「おいしい缶詰」や、ジャム・フルーツ缶の「日本のめぐみ」を育成する。「改めて各事業を見直し、創業の精神であるフロンティアスピリッツで取り組んでいく」(米井社長)という。

――以下は米井社長の発言要旨である。
当社の創業130周年にあたる15年は、本社ビルの改修工事が終わり、2年ぶりに京橋に戻った。京橋西地区の再開発に合わせて進めてきたもので、中央区の有形文化財に指定されている当社ビルは、昭和8年の建設当初の趣を甦らせた。1階の京橋店もリニューアルし、店づくりも品揃えも現代風に一新した。若い人の取り込みをテーマに、特徴のある商品や、より日常使いしていただける商品を増やしている。
日常性の強化は全店のテーマでもあり、そのコンセプトで開発している「明治屋ストアー推奨品」は約300品に増えた。優れた品質のものをリーズナブルな価格で提供し、日常的に楽しんでもらえることを目指している。従来は国内の生産者との取り組みだったが、プロシュートやメープルシロップなど、海外の商品も増えてきた。
既存店は14年度に続き、15年度も前年クリアを続けている。経済状況は不透明な部分がやや増えているものの、今後も悪くない基調が続くとみている。
そうした環境のなか、今は会社組織を原点から見直す時期にある。経営理念の「いつも いちばん いいものを」は変わらないが、チャレンジ精神やフロンティアスピリッツといった、創業の精神に立ち帰って企業全体を見つめ直す。各事業領域で、さらに意欲的なチャレンジが必要だ。
小売事業は出店を強化し、商品事業は「おいしい缶詰」の拡充をはじめ、オリジナル商品の開発を加速していく。輸入食品も開拓の余地が残されている。社会変化を踏まえ、日本のマーケットに合ったサイズ、パッケージでの商品化がこれまで以上に重要になっている。取引先とタイアップし、我々が変化を先取りしていかねばならない。海上事業においても、船舶事業は東京オリンピックに向け、観光客船を開拓するチャンスだ。工業部品を扱うチェスタートン事業でも、ITシステムによる新サービスを積極的に展開している。
日刊流通ジャーナル2015年12月16日号より抜粋