平野実社長インタビュー
全日本食品(平野実社長)は、本部資金を使った支援策により、加盟店の改装・出店意欲を高める。投資リスクへの不安から、店舗のテコ入れや事業拡大に踏み出せない加盟店を後押しする。品揃えや売価設定、FSPの活用といった本部施策の徹底を求め、既存店の底上げや店舗数の拡大につなげていく。一方、JAグループとの提携などによる供給先の拡大も進める。「供給先の拡大で本部の余剰金が増えれば、加盟店へのさらなる投資に回せる」(平野社長)

――以下は平野社長の発言要旨である。
これまで加盟店は純増を続けてきたが、14年度は純減になった。100店増えて80店減少するくらいのペースが逆転してしまった。改めて成長軌道に乗せるために、守備と攻撃の両面から加盟店の意欲を引き出していく。
守備的な取り組みでは、加盟店の改装に本部資金を活用する。店舗に手を入れていないために業績が上がらない加盟店のテコ入れにつなげていく。改装に踏み切れないのは、投資リスクへの不安があるからだ。しかし何もしなければ、やがて閉鎖に追い込まれる。対象となるのは小さな店がほとんどだが、なくなれば地域は困る。そういった店が全国にある。一定の条件のもと、本部が融資することで改装を進める。
商圏調査をもとに、個店ごとにこのくらいは売れるはずという基準を割り出した。本部施策を実行することで実現可能なものだ。業績が悪い加盟店は、店舗が古いだけでなく本部施策も徹底されていない。改装を機に、本部が全面的に関与していく。
対象となるのは500〜600店舗で、5年くらいのスパンで進めていく。もちろん、投資を回収できないケースも考えられる。その不安があるから加盟店は挑戦できないのであり、本部もリスクを分かち合うから、一緒にやりましょうというのがこの施策のポイントだ。優良店を増やして加盟店の減少を抑える。業績が改善して供給が増えれば、本部のメリットにもなる。
一方、攻撃的な取り組みとして本部主導による出店支援を進める。本部が店舗を開発し、収益の目処が立った時点で加盟店に譲渡する。これまでに15店を譲渡し、13店を閉鎖した。現在、本部が30店ほど運営している。本部が抱えられるのは最大でも40店くらいだろう。
譲渡をスムーズに進めなければならないが、加盟店にとって店舗を増やすことはリスクを伴う。店舗の名義まで譲渡すると、それだけ資金が必要になる。そこで、本部が所有したまま店舗を転貸し、使用料を払ってもらうスキームを導入した。
加盟店に運営してもらった方が、店舗の売上は伸びる。直営で本部施策を徹底しても、平均的な優等生というか、抜きん出るものがない。商いの技術や思いに関しては、やはり加盟店の方が優れている。
加盟店の約7割が1店舗の経営にとどまっている。支店を持つことに意欲が高まれば、既存の加盟店だけでも店舗拡大の余地は大きい。
日刊流通ジャーナル2015年12月17日号より抜粋