川野澄人社長インタビュー
ヤオコー(川野澄人社長)は、11月までの累計で既存店が5.9%増と好調に推移している。カード会員が増加し、客数が伸長している。ただ、売上増で店舗のオペレーションは余裕がない状況が続いているという。また、出店ペースは鈍化傾向にある。人員と物件の確保が成長戦略の課題になっている。人材の採用・教育と並行し、店舗のバックアップ体制を強化する。デリカ・生鮮センターを拡張するほか、17年秋には新物流センターを稼働させる。出店では都心部への進出を目指し、200〜300坪の小型フォーマットを構想している。

――以下は川野社長の発言要旨である。
既存店はかつてないほど好調で、105%前後の推移が続いている。11月は102%を割ったが、前年にはない全店休業を1日設けたためで、トレンドが変わったとは考えていない。カード会員の増加によって新規顧客の取り込みが進んだ。ヤングファミリーの取り込みをテーマとしてきたが、結果的にシニアの構成比が上がっている。朝一作業の改善により、午前中のお客さまを取り込めるようになったことも大きい。
今期スタートした中計では、競合とは明らかに違うと言われる存在になることを目指している。それはネットスーパーに対しても同じだ。ネットスーパーの市場がどれほど拡大するかは分からないが、買物が必要な商品の補充でしかないのであれば、リアル店舗から1〜3割はシフトする可能性がある。ネットでは味わえない体験を提供することで差別化しなければならない。目の前に出来たての商品が並ぶ。季節感がある。店員とのコミュニケーションがある。そのようなリアルならではの楽しさをどれだけ積み上げていくかだ。一部店舗で料理教室のトライアルも始めた。ヤオコーに行くことが生活の一部になるような取り組みを進めていく。
16年も基本方針に変更はない。関係者すべてとの信頼づくりや、働きがいと働きやすい環境づくりを進めていく。ただ、今まで以上にスピードを上げる必要がある。15年はやるべきことが思うように進まなかった反省がある。
売上が好調だった半面、それに追いつくための人材確保にパワーを割かれた。取り組みが進まない要因には、13〜14年度と2ケタ前後の出店が続いたことで、経験の浅い店長や主任が増えたこともある。教育体制や目標設定のあり方を工夫していく。現在のSMは、大きな流れとして同じ方向に進んでいると感じる。その競争で優劣を決めるのは、やはりスピードだと考えている。
日刊流通ジャーナル2016年1月12日号より抜粋