成瀬直人社長インタビュー
いなげや(成瀬直人社長)は2014年度からの中期2ヵ年計画で、新店、改装店を通じて「惣菜を柱に生鮮を強化したSMづくり」に取り組んできた。その集大成が12月10日オープンした「ブルーミングブルーミー ららぽーと立川立飛店」(東京都立川市、売場面積679坪)である。2016年度からの新中期2ヵ年計画では、マーケティング発想を軸とした商品経営を政策の中心課題としていく。

――以下は成瀬社長の発言要旨である。
「ブルーミングブルーミー ららぽーと立川立飛」は、広域商圏を対象とする大型SCであり、当社はその核店として出店したことで思い切った挑戦ができた。この店で取り組んでいる数々の新しい試みを順次他店にも水平展開していく。この意味で同店は、当社にとって「新たな創業店」と位置付けている。
当社は前期から、「惣菜を柱に生鮮を強化したSMづくり」に取り組んでいる。この集大成が「立川立飛店」であり、未来志向の新しいSMをめざしている。
好評なコーナーの一つは、30アイテムの惣菜を温水の専用什器で温め、バイキング方式で提供している「ちょちょいのチョイスデリ」である。「おかずビストロ」、「おつまみデリ」、「らくちんデリ」も好評だ。このほか「ディッシュデリ」シリーズとして、食卓に皿のまま乗せられるように8アイテムを提供している。こうした買ってすぐ食べられる出来立て商品に対するニーズは今後さらに高まる。
一方、ヘルシーニーズの高まりに対応して、野菜も惣菜同様に売場を広げ充実させている。青果ではこのほか、当社では初めてインストア調理によるカットフルーツコーナーを展開している。
経営はマーケティング発想を軸に
今期のSMの新店は、今年2月リプレイスオープンする「保谷店」(東京都西東京市)を含めて5店となる。一方、「ウェルパーク」は今期、Drug.S11店を新設した。当社は年間、SMを5店前後、Drug.Sを10店前後出店するペースを基本としている。今期の場合、ほぼ計画通りのペースを維持している。来期、再来期もこのペースを維持していきたい。
一方、前期から本格的に取り組んでいる既存店改装は、前期の57店に続き、今期は60店を計画している。来期からは改装が2巡目に入るが、来期、再来期共に年間60店規模の改装ペースは維持する。これにより基本的にほぼ2年に1回の割合で既存店に手を入れ、惣菜を柱に生鮮を強化した、より進化型のSMづくりを推進する。
来期からスタートする中期2ヵ年計画では、マーケティング発想を軸とした商品経営を政策の中心課題としていく。
従来当社は、マーケティング発想よりも、オペレーションの確立などを中心としたマネジメント発想で経営に取り組んできた。だが私が社長に就任して以来、会社全体でのマーケティング発想による市場調査や、店としての商圏調査に力を入れて来た。これによってお客さまのニーズを探り、それに合わせた商品構成、売場づくりに取り組んできた。この考え方は随分浸透してきたと思う。
来期からは遅ればせながら、こうしたマーケティング発想を軸とした、商品を主体とした経営に全社を挙げて取り組む。これを支えるインフラとして今春、東京都武蔵村山市に新たな精肉PCと惣菜PCを本格稼働させる。
精肉PCでは、徹底したコールドチェーンで、ready to heat、ready to eat、ready to cookの商品を、2次加工、3次加工して提供する。一方惣菜PCは、味と品質に定評のある「三浦屋」ブランドの商品を中心にする。煮物、弁当、プリンなど価格はややアッパーだが、非常に美味しいと評判の商品をここで集中生産し、いなげやと三浦屋で販売する。
そして2年後には、旧精肉PCの建物を利用して、いなげや本来の惣菜を集中加工する新たなPCを立ち上げる予定だ。これでPCネットワークは一段落するが、売上高が3000億円を超える規模になれば、また新たなインフラ整備が必要になるだろう。
日刊流通ジャーナル2016年1月8日号より抜粋