需要創造型の商品・飲み方・販促提案
アサヒビールは15年度、ビール類の販売数量が1.4%減となったものの、洋酒の売上高は3割増、ワインはエノテカの完全子会社化もあって2.3倍となり、増収を確実としている。総合酒類企業として飛躍した15年を経て、16年は改めて「ビールの復権」を目指す。「スーパードライ」は、家庭で氷点下のビールが楽しめる「エクストラコールドタンブラー」のプレゼント企画をはじめ、本体の価値向上に力を入れる。また、3月23日にはビールで7年ぶりとなる新ブランド「ザ・ドリーム」を発売する。ビールにおける味わいの傾向を大別するコクとキレを兼ね備えた「コクキレ」ビールとして、新しい味覚領域の創出を目指す。

ザ・ドリーム コクキレ 味覚の新領域に挑戦
ビールで7年ぶりとなる新ブランド「ザ・ドリーム」は、「コクキレ」という新たな味覚領域の創出を目指す戦略商品だ。「スーパードライ」に代表されるキレ系ビールと、プレミアムビールに多いコク系ビールのいずれとも異なる、コクとキレを高度に調和させた味覚の新機軸を打ち出す。家庭用チャネルの商品としてスタートし、初年度は400万ケースを計画する。
マーケティング本部長の田中晃取締役は、「1987年にスーパードライでキレ・辛口の味覚領域を開拓して以来の新機軸に挑戦する。これまでコクとキレを兼ね備えたビールは存在せず、そこに潜在的なニーズがあるとの仮説から出発し、2年がかりで開発した。ユーザーの嗜好を徹底的に深掘りするため1万人の市場調査を実施しており、ビール通を唸らせるものに仕上がったと自負している」と語る。
味覚の新機軸を打ち出すだけでなく、同ブランドは糖質50%オフの機能性も備える。ブランド名の「ザ・ドリーム」には、これまでになかったコクキレの味わいを実現したことと、糖質を抑えることで気兼ねなく飲めるという2つの意味を持たせている。
「ザ・ドリームを機能性ビールとして提案するつもりはない。糖質オフは、健康意識が高い現代の要請であり、味わい提案とは別に不可欠の要素として付加した。レギュラービールの棚で定番化を目指す」(田中取締役)

エクストラコールドタンブラー
氷点下のビールを家庭で手軽に
主力の「スーパードライ」は、本体の価値を高める施策を中心に、16年度は前年比0.2%増を目指す。
3月7日から5月9日まで展開するポイントコレクトキャンペーンでは、オリジナルの「エクストラコールドタンブラー」をプレゼントする。3層構造のステンレスタンブラーを冷凍庫で冷やし、これに約6℃のビールを注ぐと60〜90秒で氷点下まで冷え、数十分にわたり保冷できる。このタンブラーを広く普及させることで、家庭における飲用時品質を高める。
田中取締役は、「業務用を中心とするエクストラコールドの展開で、スーパードライには冷涼という価値イメージが浸透している。エクストラコールドタンブラーで飲むことにより、ブランドの特徴であるキレ味がいっそう引き立つ。まず3月からのキャンペーンで100万個の出荷を予定する。その後もギフト商品や直販サイトでの販売を計画している。国内では1700万世帯が常時、ビールを楽しむと推計されている。将来はその半数にタンブラーを普及させたい」と語る。
また、製造後3日以内に出荷する「鮮度実感パック」を、製造から翌日以内に短縮し、鮮度の訴求レベルを引き上げる。
そのほかエクステンション戦略も継続し、2〜3月には桜デザインのスペシャルパッケージを完全予約受注で発売する。昨年は計画の2倍に相当する62万ケースを販売した。今年は瓶や2リットル樽缶などアイテム数を拡大し、飲用シーンの拡大を図る。
「エクステンションを展開することで、調査によるとブランドの勢い指数は上がっている。ユーザーとの絆を太くする施策として、限定品の展開は継続する」(同取締役)
週刊流通ジャーナル2016年1月18日号より抜粋