モルツ、プレモル、マスターズドリーム



ビール3層構造で需要を創造
サントリービールは15年度、ビール類計の販売数量が1.8%増となり、総市場が前年割れとなるなかシェアを高めた。9月に発売したスタンダードクラスの「モルツ」が、当初計画の200万ケースを上回る324万ケースとなったことが貢献した。
水谷徹社長は、「モルツ」について次のように語っている。
「ビール離れが進んだ20〜40代に、自分たちのブランドと感じてもらうことができた。ビール市場を元気にするには、若い世代を取り込むことが重要だ。ウイスキーも60代に支えられている間は元気がなかった。ハイボールで若い人たちを取り込めるようになったことで活性化した。旨みを特徴とするニュースタンダードビールの確立に挑戦していく。市場定着に向けた目標として、16年は730万ケースを計画する」
サントリーのビールブランドは、スタンダードの「モルツ」、プレミアムの「ザ・プレミアム・モルツ」、スーパープレミアムと位置づける「マスターズドリーム」の3層構造になっている。一貫しているのはコクや旨みなど味わい重視の中味設計だ。
「ビールの嗜好は30年周期で変化している。苦味から辛口に変化したのが30年前で、現在はコク、香り、旨み、フルーティといった味わい軸にシフトしつつある。当社はこの味わい軸にブランドポートフォリオを揃えた」(水谷社長)
1年目の「マスターズドリーム」は、ギフトやコンビニなどの限定品として展開した。今年は製造工場を2カ所に増やし、3月15日から全チャネル展開に踏み切る。
「マスターズドリームのユーザーは、5割以上が他の酒類からの流入だった。他のカテゴリーから引っ張ってこれることも、ビールの活性化には重要だ」(同社長)
エールカテゴリーの確立へ
主力ブランドの「ザ・プレミアム・モルツ」は0.8%減となり、10年以上にわたる前年クリアの記録が途切れた。プレミアム市場全体が14年度の急拡大から縮小に転じている。しかし水谷社長は、13年対比では9%増と伸長していることから、新商品ラッシュとなった14年の過熱分を差し引けば、プレミアム市場は確実に成長していると指摘する。
既に「ザ・プレミアム・モルツ」はダイヤモンド麦芽を増量するリニューアルを実施し、CM等で価値の向上をアピールしている。販促活動では年間を通じてハレの日での提案を強化する方針で、父の日や盆、年末など親和性の高い催事には専用CMも放映していく。
また、3月1日にはシリーズ商品「香るプレミアム」を一新した「香るエール」を発売する。エールタイプのビールであることを前面に打ち出すことで、プレミアムビールの新カテゴリー確立を目指す。
「エール発祥の英国や、米国式エールの味わいそのままでは、日本に定着するのは難しい。我々は日本人に合うエールを追求し、フルーティで爽やか、食との相性もいいジャパニーズエールを提案する。既存品のユーザーは6割以上がザ・プレミアム・モルツを飲まない新規飲用者で、女性比率が4割を超える。これを大型ブランドに育てることで、ビールの幅を広げたい」(同社長)
16年度の「ザ・プレミアム・モルツ」は、3%増の1800万ケースを計画する。3層構造のビールカテゴリーを6%伸ばし、ビール類計では2%増を目指す。
水谷社長は、「15年の挑戦で得た成果を、しっかりやり遂げる。ビールの需要創造にこだわっていく」としている。

週刊流通ジャーナル2016年1月25日号より